バイク比較

2023.06.17

XSR700

ミドルクラスバイク比較シリーズ、今回はXSR700にフォーカスして、SV650、Z650RS、CBR650Rなどとの違いを紹介します。

XSRの素材は2021年モデルですが、2022〜2023年のものと走行性能はほぼ変わりません。

1.走行特性

まずはXSR700の走行特性を整理してから、個別の比較に移ります。

(1)低回転トルク

XSR700の特徴は低回転トルクの演出が強く、これはマスターオブトルク、兄弟車のMT-07譲りです。ストップアンドゴーが楽々なのはもちろん、高速道路は制限速度域手前から6速固定で一気に追い越しもできます。

ドンつきがちょっと強めなところがあり、アクセルオンオフは優しめにしないとガクつきが大きめです。とはいえ同クラスの他のバイクと比べた感触で、乗りづらいほどのものではありません。

(2)旋回性能

XSR700の特徴の2つめとして、旋回性能の高さがあります。とても曲がりやすいバイクで、およそどんなシチュエーションでも軽々曲がっていけます。MT-07よりシート高が高く、ハンドル幅が広くなっていて、これによって車体コントロールがしやすく感じます。また、ホイールベースとトレールが短めに設定されていて、直進安定性よりもクイックなコーナーリングが得意です。同クラスのバイクと比べると、XSR700はホイールベース1400、トレール90SV650はホイールベース1450、トレール106CB650Rはホイールベース1450、トレール101Ninaj650はホイールベース1410、トレールが100XSRはトレールの短さが特に際立っていて、数値からも比較対象よりコーナーリングマシン寄りであることがわかります。

(3)エンジン特性

エンジンは270度クランク直列2気筒エンジンです。最近の2気筒中排気量以上では、一部のメーカーを除いてほぼ270度クランクに集約されてきました。このタイプは、低回転のドコドコ感がおもしろいエンジンで、Vツインに似ています。(SV走行動画)ただし本家Vツインの方が個人的には心地良いと思うので、こだわり派の人にはVツインをオススメします。

XSR700のドコドコ感は、ビッグオフローダーのテネレ700にもセッティングを変えて使われていますが、テネレだとよりキャラクターに合っています。

(4)高速走行

高速走行は、可もなく不可もなく、といったところです。直進安定性寄りのバイクではありませんが、ロングツーリングにも十分なパフォーマンスを持っていて、早朝からの一日ツーリング程度では他のバイクに比べて特に疲れが大きいことはありません。

ネイキッドなので防風性能は低いですが、スクリーンを増設すると結構違います。11 パフォーマンスダンパーまた、ヤマハと言えばもちろんパフォーマンスダンパーの設定がありますが、パフォーマンスダンパーをつけるとより快適です。

2.外観、外装

(1)外観XSR700の外観は、おしゃれなクラシック系です。カワサキのRSシリーズほど純クラシック路線ではなく、ホンダのCBのRシリーズほどデザインを再構築しすぎていない、というバランスにいます。

(2)シート高シート高は835mmで、およそ比較対象にするであろう車両たちより高めです。身長175cm、股下82cmの場合、高くもなく低くもなく、長距離移動でも膝などの窮屈感がなく、最適な高さです。スニーカーで両足踵が余裕を持って着くので、ちょうど扱いやすい水準です。これより高いシートが良い人は、ビッグオフローダーのテネレ700がオススメです。テネレローがXSR700と近いシート高で、テネレのノーマルシート高は875mmです。XSR700はローシートオプションがあり、2cm下げられます。

(3)ステップ位置ステップ位置はホンダCB400スーパーフォアなどよりちょっと前めで、楽な位置です。完全停止時にはステップの後ろ側に足を下ろせますが、走行中に停止する時などは、足を着く位置にステップが来るので、外側に足を着くことになり、足つき悪めになっています。

(4)メーターメーターはデジタルの丸いメーター一つで、情報量が少なめです。基本情報以外は、時計、オドメーター、トリップメーターなどの要素から一つだけしか表示できません。時計がないSR400も不便ですが、XSR700のメーターも日常的に不便さを感じます。2022年モデルでメーター位置がオフセットされましたが、以前のモデルはハンドルバーについていて、下を向かないと見えず、メーターの見づらさも一級品でした。

(5)積載現行モデルにはなくなりましたが、以前は純正サイドバッグがありました。これは積載量は少ないものの、ワンタッチ取り外しできてまずまず良いです。キャリアをつけてシートバッグをつけるか、トップケースをつけるか、ということもできますが、トップケースは雰囲気が一気に壊れます。長距離旅行のときだけつける、という感じですかね。サイドバッグサポートが比較的高い位置につけられるので、両側サイドバッグで結構積載量が確保できます。

3.利便性

(1)街乗り性能街乗りには結構向いていて、車重が188kgとCB400スーパーフォアなどよりも軽く、取り回しに不自由はありません。最小回転半径は2.7mと、CB400SFの2.6mより少し大きいですが、スズキSV650の3m、SV650Xの3.3mより楽です。カワサキZ650、Z650RSは2.6mです。

XSR700は車体サイズが少し大きめなので、駐車スペースが狭い場合などにはちょっと扱いづらいと思います。

排気音がかなり静かな方で、日常使いでの近所迷惑感は小さいです。早朝からエンジンをかけて出かけても、苦情などは出にくい方でしょう。

(2)ツーリング性能乗車姿勢ですが、前傾率が24.8%、32.7%と、ほどよい軽前傾のため、長時間走行が楽です。ネイキッドのため高速走行は不利ですが、標準状態でも速度を抑えめにすれば余裕を持って走れます。車両の特性上、直進安定性よりハンドリングに重きを置かれていますが、より高速走行を快適にしたい場合はパフォーマンスダンパーを付けると良いです。微振動が緩和されて、高速走行がより快適になります。

スクリーンも有効で、純正フライスクリーンなどのサイズでもかなり効果があります。

走行風の整流効果があり、風の当たり方が暴力的でなくなるので、ある程度快適になるでしょう。

2022年モデル以降は、ライトの位置が下がり、純正品はメーターバイザーになっていて整流効果が低いので、社外品を使った方が良さそうです。

4.個別比較

購入検討に比較するであろうバイクたちと個別に比べてみます。

(1)スズキSV650・SV650X

まずスズキSV650とSV650Xから。排気量が近く、以前はエンジンパワーなどは大差なかったのですが、排ガス規制対応でSVの方が少しスペックが落ちたので、エンジンスペック数値ではXSRの方が上です。排ガス規制対応前のモデルでも、XSR700の方が低速のトルクの強さを感じます。その分高回転の伸びが感覚的にやや頭打ち感を感じやすく、またアクセルオンオフでのドンツキが強くなっています。(SV走行動画)SVの方はトルクの出方がより自然に感じるので、低回転トルクの演出が好きかどうかで分かれると思います。

走行感を比べると、SVの方が直進安定性が高く、XSRの方がクイック感があります。直後に比べると「曲がりやすい」「安定している」と如実に感じるものの、慣れでどちらも「曲がらない」とか「直線が不安」とは全く思わないので、それほど気にしなくて良いと思います。

エンジンは270度直列2気筒とVツインなので、フィーリングは似ていますが、(SV走行動画)気持ちよさはVツインに軍配が上がります。VツインエンジンのSVは、このエンジンのバイクに乗りたい、と思ってついつい走らせてしまいますが、(XSR走行動画)XSRのエンジンにはそういった不思議な魅力はありません。(SR走行動画)ちなみに、ヤマハSR400の単気筒エンジンも、エンジンに吸い寄せられる不思議な魅力があります。SVのVツインとSRのエンジンは不思議な魅力の部分では出来が良すぎるので、(XSR走行動画)エンジンフィーリングにこだわるタイプの人は直列2気筒の擬似的な演出では満足できないかもしれません。

エンジン大好きの人は迷わずSV、トータルバランスならXSRという選び方で失敗は少ないと思います。車体サイズも違いが大きいので、身長との相性も重要でしょう。

(2)カワサキZ650RS・Z650・Ninja650

カワサキの650シリーズは、180度クランク直列2気筒エンジンで、ドコドコ感は薄れます。エンジンスペックが数値上はXSR700やSVよりも低いので、そこがちょっと惜しいところです。直列2気筒エンジンの270度クランクと48-2180度クランクは、至高のVツインという存在との差に比べると、官能性という観点ではそれほど大きな違いはなく、エンジンでXSRを選んだり、またNinjaを選んだり、という人は少ないと思います。

装備と外観ですが、まずNinja650はフルカウルです。フルカウルながら前傾率30%台と軽めなので、ミドルクラスフルカウルツアラーとして唯一の存在です。ホンダのCBR650Rはハード前傾ということもあり、Ninja650を選ぶ価値がここにあります。

Z650RSは、丸めネイキッドでXSR700と同系ですが、XSRの方が現代的に再構築したオシャレ系、Z650RSの方がよりクラシックにまとめています。また、XSRのメーターは円形デジタルメーター1つで、時計を表示すると走行距離が表示できない、という明らかに情報量が足りないものですが、Z650RSのメーターはZ900RSと同じアナログ2眼メーターとデジタルインフォメーションの組み合わせで、情報量は十分です。アナログメーターが好きな人なら圧倒的にZ650RSのメーターに食いつくでしょう。同じくアナログ2眼メーターのCB400SFが絶版になった今、カワサキのRSは数少ない貴重な存在になっています。

まとめると、スペック重視ならXSR700、ツアラー性能重視ならNinja650、2眼メーターなどよりクラシックな外観に惹かれる人はZ650RSという選び方が、満足度が高いかもしれません。Z650のストリートファイター系も、外観の好みが合う人にマッチしますが、ストファイ好きにはMT-07もあるので、2択で選べます。

(3)カワサキZ900RS

ちょっと排気量が大きくなりますが、見た目クラシカルなタイプで比較する人もいるかもしれないので、カワサキZ900RSも比較してみます。

(Z900RS走行動画)Z900RSはXSR700より明らかにパワーがあります。また直列4気筒エンジンで、XSR700のドコドコ系に対してヒューンというスムーズなフィーリングです。Z900RSの方が車重が30kgくらい重くて車体が少し大きく、直進安定性はZ900RSの方が高くなっています。

(Z900RS走行動画)高速道路など直線をガツンと走りたい人はZ900RS、街乗りやワインディング走行が多い人はXSR700の方が使いやすくて出番が多そうに思います。Z900RSは売れすぎて町中で人とかぶる確率がとても高いので、かぶりたくない人にはXSRシリーズはオススメです。

(Z900RS排気音動画)また、Z900RSの排気音はかなり大きく、逆にXSR700はかなり静かなので、迫力のある音を求める人はZ900RSの方が手っ取り早いです。

XSR700とZ900RSでは、乗るときの気分的な億劫具合が全然違うので、1台でいろいろこなしたい人は迷わずXSR700の方が良いです。

(4)ホンダCB650R・CBR650R

ホンダCB650RとCBR650Rは、4気筒エンジンです。(CBR走行動画)Z900RS同様、ヒューンという感じです。Z900RSは高音と低音が混ざった感じ、CB400SFは高音、CB650Rは低音中心の野太めな音です。

(CBR走行動画)高回転時のピークパワーは高く、逆に低回転時のトルクは低めです。高速道路の追い越しで4気筒のCB650Rはちょっとシフトダウンしたくなりますが、XSRの2気筒エンジンは高速道路でも6速固定で軽く追い越しできます。

(XSR走行動画)下道のダッシュも2気筒エンジンのXSRの方がレスポンスが良く、日常域ではXSRの方が軽くて速く、使いやすいと感じる人が多いと思います。

CB650Rは、貴重なミドルクラス4気筒なので、4気筒好きでミドルクラスを探すと71-2必然的にCB650RとCBR650Rになるでしょう。

(CB400走行動画)以前はCB400との競合もあり、あえてVTEC400ccを選ぶ価値も非常に高く悩ましいところでしたが、400が廃番になった現在は400cc以下のカワサキの4気筒かCB1000Rなどの1000ccクラスになるので、73-2CB650RやCBR650Rを検討する人の悩みが減ったかもしれません。

4気筒エンジン好きならCB、そうでなければXSRというシンプルな考え方で問題ないと個人的には思います。

心の支えになるバイク、XSR700

XSR700は、一言でまとめると、心の支えになるバイクです。(XSR走行動画)これ1台あると、都心の路地からロングツーリングまで幅広く万能に、かつ高いレベルでこなせるので、遠目の知らない場所に行くときやマスツーリングに行くときは個人的にはXSR700ほぼ一択です。(XSR車体動画)体のサイズは、おそらく身長175cm〜180cmくらいの人がジャストフィットだと思いますが、体格さえ合えばこれほど使いやすいバイクは他にないのでは、と思えるほど、ネガティブ面がほとんどなく優秀です。

Z900RSのように人気すぎてどこに行ってもかぶる、というバイクではないので、人とあまりかぶりたくない人にもオススメです。

大型ミドルクラスバイクは、ニーズにあわせて各バイクにフォーカスして比較していきたいと思っているので、気になる人はぜひ高評価を押していってください。