バイク比較

2023.07.22

空冷単気筒

鼓動感が気持ちいい空冷単気筒バイクを、250から400ccまで乗り比べました。

ロイヤルエンフィールド350

まずはイギリス発祥、インドに移ったロイヤルエンフィールド。ロイヤルエンフィールドの350ccシリーズは、クラシックメテオハンターの3つがあります。それぞれ、雰囲気だけでなくタイヤサイズやステップ位置なども違うので、乗り味には違いがあります。ホンダGB350とGB350Sのような関係ですね。

クラシックはその名の通りクラシック感が一番強く、タイヤが前19、後ろ18、ステップが前めにあって干渉しにくい位置にあります。ホンダGB350の無印モデルは、このクラシックとタイヤサイズ、シート高、ステップ位置が似ています。ホンダの方がやや現代の一般的なバイクに近いでしょうか。

メテオはクルーザースタイルとなっていて、ステップがかなり前になっています。これによって足はリラックスできて、長距離の疲労も特に大きくありません。ホンダレブルをはじめ、最近のクルーザー系はハンドルが遠く、体をくの字のような姿勢で乗ることが多いですが、メテオは普通のハンドル位置で、ステップ以外は一般的なバイクと変わりない乗車姿勢です。今度、レブル、エリミネーターと中型クルーザーの視点で比較してみたいと思っています。

ハンターはより新しい感じ、車重も10kgほど軽くなっていて、運動性能に訴求するコンセプトのようです。タイヤサイズは現代のスポーツモデル同様、前後17インチとなっています。着座位置によってステップが干渉しやすいので、人によって足つき悪目と感じるかもしれません。ただしシート高は790mmとクラシックの805mmより低いです。

外観

外観は、全体のフォルムはどのモデルも似ていますが、各パーツの造形や仕上げが違うので、並べるとそこそこ違いがあります。

ハンターはブラック系の仕上げで、現代的になっているものの、造形は純粋な丸目ネイキッドスタイルです。ホンダのCB250Rや、21-2ヤマハのXSRシリーズと比べてもデザインの再構築が少なく、古典的なデザインが踏襲されています。タンクが単色系とツートン系に分かれており、金額がちょっと違います。

メテオとクラシックはメッキ仕上げのモデルがありますが、ブラック仕上げのカラーもあり、カラーバリエーションが豊富です。

メテオはブラック仕上げのファイアーボール、バックレストがついてメッキマフラーのステラスクリーンもついたスーパーノヴァの3種類があります。

クラシックはベーシックカラーマット系ダーク系クローム系の4種類となっています。

乗り味

ロイヤルエンフィールド350シリーズの乗り味は、ちょうどいいパルス感があって、バイクに乗っている感があり、長時間走っても飽きずに走れそうです。パルス感と音のバランスは自然で、違和感も不快感もありません。

走行フィーリングは、軽快にキビキビ走る感じではなく、疲れにくいレスポンスです。低速のギクシャク感も少なく、1速でも神経を使わずに走れるので、1台で万能にこなしない人にも向いています。

旋回もしやすく、曲がりやすいバイクと言えるでしょう。クルーザー系カテゴリーとされるメテオも普通に曲がりやすい特性です。ホンダレブルなどはハンドルが遠く、ハンドル操作に介入しないと曲がりにくい面がありますが、ロイヤルエンフィールドはセルフステアに任せて綺麗に曲がれます。

街乗り

街乗り全般としては、乗りやすく加速感も十分で、特別速くはありませんが公道を普通に走る上で申し分ありません。低速走行から幹線道路まで、おそらく困るシーンはないでしょう。旋回性能も問題ないので、ワインディングなどを楽しく走れます。下道を走る感覚は、カワサキのエストレヤを大きくしたような感じです。ヤマハSRとは全然違い、ホンダGBとも全然違います。感覚は人それぞれと思いますが、個人的には自分の感覚の通りに走ってくれるので、心地よく好きなバイクです。

高速道路

高速道路走行は、振動はそれほど問題なく、時速100kmまでの速度域で振動に悩まされることはありません。ハンドルの振動は少ない方だと思います。ステップはやや振動しますが、困るほどではないでしょう。パワーがやや足りないかなと思う部分はあり、時速100km連続走行よりも80kmくらいで走りたいと思うところです。スクリーンがあれば高速道路は普通に使える、というイメージです。

まとめ

ロイヤルエンフィールドはパルス感がほしいクラシック感が好き国産にこだわらないバランス重視

という人にオススメします。合計すると年間1000台以上売れていてハーレー以外の輸入車ではトップの売れ行きとなっています。

GB350

ホンダGB350は、インドなどでロイヤルエンフィールドの対抗バイクとなっているようです。

無印GB350がロイヤルエンフィールドのクラシック、GB350Sがハンターに近いバランスになっています。GB350は、今回紹介するバイクたちの中では車体が少し大きめです。

外観

外観のクラシック感は薄く、クラシック感を求めるとロイヤルエンフィールドやヤマハSRに一日の長があります。メーターの雰囲気など、ロイヤルエンフィールドの方が高級感があり、2眼メーターのSRやエストレヤの方がクラシック感があります。GBは無印、Sともクラシック感よりも力強さを感じる仕上げで、これはこれで良いと思います。

乗り味

GB 350は、体に感じるパルス感はありません。ドコドコという排気音はとても大きいのですが、体に感じるものがなく、こういった系統の単気筒バイクに乗り慣れていると違和感があります。体でパルスを感じることを期待すると期待との落差が大きいと思うので、単気筒バイク好きの人ほど、購入を検討するなら試乗をおすすめします。振動を徹底的にカットしているのは、優秀なバランサーシャフトによるもので、これにより日常使いの領域では振動がなく不快感が一切ありません。車体も重い方ではないので、1台でいろいろなことに使いたい、という人にはとても合っていると思います。

街乗り

街乗り性能ですが、ピークトルクが3000回転と低回転ということもあり低速からの加速力が十分にあります。

アシストスリッパークラッチもあるので、クラッチレバーが尋常ではないくらい軽く、頻繁にクラッチ操作をしても手が疲れることがありません。Sの方は脚に干渉しやすい位置にステップがあり、足つきが悪目に感じる人もいるでしょう。無印の方が前の方にステップがあるので、干渉しにくいと思います。

高速道路

高速道路では、振動がそこそこ出てきます。街乗りで全く振動がないために余計に感じやすいのかもしれませんが、時速80kmを超えたあたりから振動が増えていくように思います。時速100kmで長時間連続走行するのはちょっと避けたいと思うレベルで、やはりこちらも80km/h〜90km/hくらいでゆっくり流すのが良いでしょう。直進安定性は十分で、この排気量としては不安が少なく、メカの精度を含め、遠出することが多いならGBが一番適しているのではないでしょうか。

まとめ

GB350をオススメするのは、安心して走りたいコスパ重視売れているバイクが好きの人です。安心のホンダ製で、価格設定がとても良心的なので、需要に見合う生産さえしてくれれば買いやすいモデルです。とにかくコスパが良すぎです。2022年の販売台数は125cc以上でトップと、売れすぎて周りとかぶりやすいので、人と違うバイクに乗りたい人は避けた方が良いかもしれません。

SR400

ヤマハSR400は、40年以上前に設計されたバイクで、細かい部分以外当時のままです。そのため、見た目だけでなく中身もクラシックバイクとなっています。初期モデルはキャブレター仕様ですが、2010年あたりでインジェクション仕様に変更されています。

外観

外観はさすがの純クラシック、全体の造形から部品各種に至るまで、これぞバイク、といわんばかりの普遍的造形美ができあがっています。見た目だけなら、どんなバイクにも負ける気がしません。

乗り味

乗り味は、まさに味わいの世界です。現代のバイクが化学調味料で表面的に味付けされたものと喩えるなら、SR400の味わいは、長年仕込んだ秘伝の出汁、素材の味を生かした素朴な日本料理と言いましょうか。実際の車体の組み立ても、熟練の料理人ならぬ熟練の匠が1台1台手作業で組み立てていました。

電子制御などがない、機械そのものの乗り味は、味わってしまうとクセになり、他では満たされなくなってしまうかもしれません。

ただし、現代に初めてSRを買うと、きっと乗った瞬間あまりのポンコツっぷりに後悔するでしょう。

初めはびっくりするほどの残念感いっぱいのバイクですが、噛めば噛むほど味が出て、長く乗れば乗るほど病みつきになって手放せなくなる、そんなバイクがSRです。

今回紹介するバイクの中で、鼓動感の部分だけなら、確実にNo.1です。やっぱり最高。

街乗り

SRでの街乗りは、だいぶ楽しく、低回転域を積極的に使ってドドドドッとするのがクセになる気持ちよさです。最終モデルはピークトルクが3,000回転に下がりましたが、交差点で信号が黄色に変わって加速する時など、結構速いです。

スペック上は3000回転で28NmとGB350より1Nm低いですが、SRの方が低回転で速い気がします。ただ、普段期待していないことによる錯覚か、感じるパルスの大きさによって力強さを感じるのか、数値からすると気のせいなのでしょうか。ロイヤルエンフィールドと比べると、ロイヤルエンフィールドは4,000回転27Nmなので、SRの方が低回転スペックは上で、こちらは気のせいでなく本当にSRの方が速いと思います。特にシングル特有の低速から一気にアクセルを回すオラオラ加速は、SRの方が爽快です。

腐っても400cc、実際に走ると350cc群よりパンチ力があるな、と感じますが、SRオーナーのみなさん、いかがでしょうか。

高速道路

高速道路走行は、取り上げる必要もないほど世間の評価は固まっていて、走ってはダメ、くらいでしょうか。全くその通りだと思います。直進安定性が低く、危なっかしい上、振動もひどいので、できるだけ高速道路は走らない方が良いでしょう。SRの高速道路については、以上です。

まとめ

SR400をオススメするのはとにかくドコドコしたい人セルモーターが嫌いな人取り憑かれた人ただのヘンタイでしょうか。でも安心してください。みんなヘンタイですよ。

新規ユーザーは、とことんポンコツだとイメージしてからふれあうようにしましょう。過度な期待はしないであげると、うまく付き合っていけるのではないかと思います。

エストレヤ

カワサキエストレヤはオシャレ系絶版バイクでも紹介しましたが、

オシャレなだけではなく、250ccにしては心地よいフィーリングを持つフレンドリーなバイクです。

外観

外観はSR同様クラシック系で、2眼メーターや光沢パーツなど所有感を満たしてくれる仕上がりです。シート高が735mmとかなり低く、全体的に小ぶりな印象になっています。4cmアップのハイシートがあるので、これもあわせると広い身長幅をカバーしており、幅広いユーザー層となっています。

乗り味

250ccは心地よいエンジンが少なく、可もなく不可もなくのバイクが多いところ、エストレヤのエンジンは、なかなか良い鼓動感があります。これまで紹介した車両と同じように、低回転でアクセルを回すとほどよいパルスを感じます。レスポンスのゆったり感とあわせて、気楽に乗れる相棒感があります。SRほど鼓動感は強くなく、雰囲気も違います。(ロイヤルエンフィールド車体動画)ロイヤルエンフィールドのフィーリングに近いかなと思いますが、エストレヤとロイヤルエンフィールドのエンジンはバランサーシャフトがあり不快な振動を打ち消してくれますが、(SR車体動画)SRにはそれがありません。そのためエストレヤは、SRと同じような鼓動感は求めず、不快な振動がイヤな多くの人に向いています。

車重が161kgと軽いので、取り回しは軽々ですが、イメージより少し重く感じるかもしれません。重心のバランスなどによるのか、ここはおそらく人によって感じ方は違うと思います。

街乗り

街乗りはこの上なく快適です。低回転は扱いやすく、シフトチェンジも忙しくないので、ゆっくり気楽に乗ることが出来ます。

ただし速くはなく、スタートダッシュのレベルは125ccクラスとそう大きく変わりません。とはいえ、キビキビ走りたい人には他にもっと適したバイクがあるので、クラシックテイスト好きの人たちにとってエストレヤの街乗り性能に不満はないでしょう。

高速道路

高速道路は、パワーがなく防風性能もないので、100km連続走行などはできれば避けたいところです。エンジンは、回してもそれほど不快ではないので、高速道路を長時間走ってもそれほど極端に疲れが大きいこともありません。(CB250R走行動画)同じ250cc単気筒で比べると、水冷のホンダCB250Rの方が圧倒的に高速道路走行性能は高いです。CB250Rは優秀すぎるので勝てないのは仕方ないでしょう。(セロー走行動画)オフロードのヤマハセローより楽ですが、(KLX走行動画)モタードのKLX230SMより疲れます。

エストレヤは、街乗りメインでたまに高速道路も使う、という使い方であれば特に不満なく付き合えるでしょう。

まとめ

エストレヤをオススメするのは、とにかくこのフォルムが好き足つきに不安を感じるバイクが多い日常の足に使いたい車検がめんどくさいという人です。

シート高がこれほど低いものは数少ないので、クルーザー系でないバイクで低めのシート、と求めていくと自然にエストレヤにたどり着きます。車検のあるなしで実際はコストはほとんど変わらず、2年に1回運輸支局のラインを通すだけとはいえ、スケジュール管理が面倒なので車検不要なのはとても気が楽です。

単気筒エンジンのフィーリングを楽しみたいなら、ロイヤルエンフィールドが一番バランスがとれていると感じました。

バランス良好のロイヤルエンフィールド、コスパのGB、鼓動感MAXのSR、バランス良く、適性身長幅も広い250ccのエストレヤ、とどのモデルもそれぞれの楽しさがあるので、過度な期待さえしなければ満足度は高いと思います。

鼓動感が楽しいエンジンというと単気筒がまっさきに浮かびますが、2気筒エンジンにも味わい深いタイプがあります。ニーズがあればその辺も取り上げてみたいと思うので、気になる人は高評価を押していっていただけるとありがたいです。