ZX-4Rの街乗り走行レビュー

ZX-4Rの良いところと他のバイクとの違いをまとめてみました。今回は街乗り限定のインプレで、高速道路などのインプレは別の動画にまとめる予定です。

1.乗りやすさ

ZX-4Rですが、セパハンに慣れていればという条件付きで、極めて乗りやすいバイクです。

乗りやすいポイント1:ドンツキの少なさ

ZX-4R走行

ZX-4R走行

アクセルオンオフでのショックが少なく、それほど繊細なコントロールをしなくてもガクガクしたりしません。エンジンの気筒数が多い方がそもそもドンツキは少ないですが、4気筒でももっとドンツキが大きいバイクはいくつもあります。普段から繊細に操作している人はそもそも気にならないと思いますが、あえてラフに扱っても大丈夫なので、慣れていない人でも問題ないでしょう。

乗りやすいポイント2:ギクシャク感の少なさ

ドンツキとも通じますが、エンブレも強すぎることはなく、低速域で1速の状態でアクセルをオフにしても姿勢が乱れるほどにはなりません。ノロノロ運転や、交差点の左折、歩道の段差をまたいでガソリンスタンドに入る時など、気楽にコントロールできます。

乗りやすいポイント3:低速トルク

ZX-4Rは高回転エンジンで、レッドゾーンが16,000回転です。高回転エンジンは一般的に低回転のトルクが薄く、ホンダCB400スーパーフォアのVTECのように低回転のトルクを確保する機構などがなければ400ccでは低回転は厳しそうですが、ZX-4Rは意外に下も粘ります。2000回転まで落ちた状態から加速することも可能で、街乗りでは早々に6速に入れてしまい、6速で乗り続ける、ということもできます。低回転域で頻繁にギアチェンジしなくても大丈夫なところが、楽に乗れるポイントになっています。

乗りやすいポイント4:クイックシフター

ZX-4Rクイックシフター

ZX-4Rクイックシフター

アップダウンともクイックシフターが動作するので、発進停止以外はクラッチ操作しなくても走れます。2500回転以上であればクイックシフターが有効になるため、あまり低い回転ではクラッチ操作することになりますが、通常の加減速ではクイックシフターだけで走れるでしょう。

クイックシフターの挙動ですが、それほど大きなショックもなく、クラッチ操作で回転を完璧に合わせた時よりショックはあるものの、全く問題ない範囲と思います。シフトダウン時はブリッピングも自動でやってくれるので、至れり尽くせりです。

1台目のバイクがこれだと、普通のクラッチ操作を忘れて他のバイクに乗れなくなるかもしれない、というくらい、クイックシフター依存になりそうです。

乗りやすいポイント5:乗車姿勢

ZX-4R前傾率

ZX-4R前傾率

乗車姿勢ですが、ZXの名の通り、サーキットユースなども想定したポジションになっています。ステップはやや後ろ目で高め、体のサイズにもよりますが、ネイキッドバイクやNinja400などの直立系セパレートハンドルより脚の窮屈感があるでしょう。

前傾率は計算式によると身長175cmで40%くらいで、身長によって普通の前傾レベルか、ハードレベルか、という水準です。

同レベルのバイクはスズキGSX-R125で、寸法上はGSX-R125の方がやや前傾なもののほぼ近いので、GSX-R125から乗り換えると自然に移行できるでしょう。YZF-R3、R25は5%ほど直立、Ninja650も同じかもう少し直立ですが、ここからの乗り換えは大きな違和感がない水準です。

ジクサーSF250がさらに5%ほど直立、Ninja400がさらに5%ほど直立です。このあたりと比べるとかなり前傾が深いと感じるのではないでしょうか。

ZX-4Rより前傾が深い方は、W800CAFE、NinjaH2、海外仕様のYZF-R125が5%近く前傾、CBR650R、SV650X、隼、HAWK11がさらに5%前傾で、CBR600RRも近いです。この上は、ZX-6Rが5%くらい前傾、ZX-10R、YZF-R7、GSX-R1000R、パニガーレV4がさらに5%前傾、最上位にYZF-R1、CBR1000トリプルRがさらに5%前傾と君臨しています。

これらを見てわかるとおり、ZX-4RはヤマハR3あたりからはもうちょっと頑張れば、程度で、CBR650RやSV650Xなどに比べればかなり楽なので、慣れればロングツーリングも問題ない人も多そうです。

ただし、ステップ形状や位置はロングツーリング向きではないので、無理のない範囲で徐々に慣らしていくのが良いと思います。

全体的には、姿勢の慣れは必要なものの、ある程度慣れてもハードに感じる厳しい前傾ではなく、万人におすすめな乗りやすさを持ったバイクです。公道に慣れていれば、初めてのセパレートハンドルバイクとしても扱える人が多いのではないでしょうか。

2.スペック

最高出力は77馬力、14,500回転、ラムエア加圧時80馬力です。最大トルクは39N・m、13,000rpmです。

Ninja400と比べると、48馬力10,000回転、37N・m 8,000rpmなので、パワーは圧倒的、ピークトルクは回転数が上がっているものの数値も上がっており、低回転で大きく落ちてはいないと思います。実際低回転域もしっかり加速して普通に走れます。

タンク容量は15L、燃費はリッター20.4kmです。航続距離はおよそ300kmの計算ですが、走り方によってかなり差が出るので、参考程度としてください。

今回の車両はSEですが、RRもあります。SEは青と黒の2色、RRはグリーンですが、見た目以外にはリアサスが違います。RRのリアサスはサーキットユースを想定した微調整できるハイグレードのものです。SEにはスモークスクリーン、フレームスライダー、USBがついていますが、USBはシート下なのでちょっと使いづらくなっています。

3.おすすめ度

ZX-4R

ZX-4R

まず初心者オススメ度は、★5つ中4つくらいです。総合的に乗りやすいので、このバイクで困るシーンがあまり思いつきません。乗りやすいのはあくまでセパハン慣れしていれば、ということで、公道デビュー1台目がこの前傾度合いというのはできれば避けた方が良いのではないかと思います。

居住地にもよるので、都市部など交通量が多いエリアでの公道デビューの場合GROM、CB250R、ジクサーなど軽くてどうにでもなるバイクが良いですが、交通量がほとんどなくゆったり走れる地域であればZX-4Rでも大丈夫かもしれません。個人的には、姿勢以外は教習所のCB400SFよりだいぶ乗りやすいと感じます。

熟練者オススメ度は、★4つか★5つか迷います。リッタークラスからスケールダウンしたい人で、さすがに400ではパワーが足りないと思う人でも、回せばパワーが出るので、これなら許容範囲なのでは、という気がします。ロングツーリング主体ならミドルのNinja650やXSR700あたりの方が明らかに楽なので、もちろん好みによりますが、個人的なお気に入り度は、★5つのバイクです。

4.他のバイクとの違い

次に、街乗りやツーリングの用途として、キャラクターがある程度近そうなバイクと違いを整理してみます。

CB400SF

CB400SF

CB400SF

まずホンダの4気筒400cc、CB400シリーズです。ZX-4Rはメーカーが違うだけにフィーリングはかなり違います。

クラッチ操作だけで発進できるCBに対して、ZX-4Rはクラッチ操作だけではかなりゆっくり発進になるので、アクセル操作も必要です。ただ、発進してしまえば低回転も粘るので、ZX-4Rも2000回転くらいで普通に走れます。

ロングツーリングには、比べるならCB400スーパーボルドールの方が快適でしょう。

ZX-4Rは、CBよりも車重が10kg以上軽いこともあり、走行は軽快な印象です。スポーツバイク系のステップ位置、ステップ形状により、長時間走行などは明らかに脚が疲れやすく、前傾姿勢もツーリング向きではないためこまめに休憩した方が良さそうです。

エンジン音は、低回転ゾーンはCBの方が高めの音、ZX-4Rの方が少し低めの音に感じます。VTEC高回転ゾーンとの高回転比較を含め、今度横並びで詳細比較してみたいと思います。

Ninja400 / Z400

Z400

Z400

400ccでは、カワサキにNinja400とZ400があります。これらは2気筒エンジンで、車重が165kg強と、かなり軽量という特徴があります。

車重が軽い上、エンジンが2気筒のため瞬発力があり、街乗りのキビキビ感を求めるならこれら2気筒モデルが向いています。

普通の乗り方では、4気筒エンジンは2気筒に比べてスタートの瞬発力が低く、好みは分かれるでしょう。

同じ400ccでZX-4Rとどちらが良いか比較する場合、用途を明確にすると良いです。ZX-4Rはとても良いバイクですが、4気筒エンジンが常に優れているわけではありません。用途によって適性は変わるので、軽さ故の取り回しの楽さ、瞬発力、軽快感を重視する人にはNinja400、Z400はとても良い選択肢になります。

CBR650R

CBR650R

CBR650R

CBR650RとZX-4Rでは、速さは圧倒的にCBRです。この2台は比較検討にも良く、25R、4R、CBR650R、CBR600RR、ZX-6Rとパワーや扱いづらさ、前傾姿勢が高まっていきますが、どれもスポーツバイクカテゴリーなのでこういうキャラクターを求める人はこれらから自分に合ったものを選べるでしょう。

同じフルカウルでも、Ninja400、CBR400R、Ninja650などはだいぶキャラクターが違う分類になり、ツーリング性能を求める人はこれらの方が適性が高いです。

スポーツ性を重視する人は、ホンダCBR650Rもマッチするでしょう。スペック上はおよそZX-4Rの上位互換で、金額も今のところCBRの方が安いため、CBRにクイックシフターオプションをつけるのがコスパの良い選択肢となります。

Z900RS

Z900RS

Z900RS

カワサキの4気筒エンジンは、600の上は900になり、Z900、Z900RSがあります。900にはフルカウルモデルはありません。

900ccのエンジンは、400ccと比べると圧倒的にパワーがあるので、公道では低回転でも十分に速く、サーキットに行かないと上まで回すのは難しいくらいです。

Z900RSの場合は、排気音が重低音で、高音の吸気音のようなものが聞こえます。

楽な姿勢で乗れる4気筒エンジンはCB650Rが最小で、Z900シリーズ、Ninja1000、CB1000R、CB1300スーパーフォアなど1000cc前後のクラスになります。

Ninja650

Ninja650

Ninja650

Ninja650は、ZX-4Rと車重が近く、走行フィーリングはNinja400よりもこちらの方が近いでしょう。Ninja650はNinja400の上位互換のようなモデルですが、トルクが太いのでZX-4Rと勝負しても高回転キープできるサーキット以外はNinja650の方が明らかに速いです。

Ninja650はツーリングマシンとしてレベルが高く、姿勢も直立に近くなっています。ステップにラバーもあり、長時間走行での脚の痛みや疲労も少ないでしょう。

Ninja650の方が万能に使えて利用シーンが広く、ZX-4Rより価格も安いことも魅力です。4気筒エンジンにこだわる人以外は、Ninja650を乗り比べてみるのもおすすめします。

5.選ぶ基準

ZX-4Rは、4気筒エンジン縛りでバイクを求める人がたどり着くと思います。2気筒も選択肢に入る場合は、2気筒モデルを選んだ方がコスパが良くて使いやすいでしょう。Z400が2台買えると言うと言い過ぎですが、ETCをつけたりするとそれに近い水準になるため、価格差がかなり大きいです。

4気筒エンジン縛りで検討する場合、まず1000ccと600ccのガチスポーツ系は、用途が特殊なのでツーリング向きには作られていません。街乗り専用機として乗る人は相対的には少なめです。ZX-4Rもサーキットユースを前提に作られているものの、乗車姿勢や乗りやすさなどを見る限り、街乗りで普通に使えることを想定しているように思います。

ZX-4Rを検討する人は、25R同様サーキットユースよりも街乗り専用機の想定の人が多いでしょう。ZX-4Rの4気筒実質的比較対象は、絶版モデルを除くと・CBR650R・CB650R・ZX-25Rの3つになります。

これらとZX-4Rを比べると、大型免許があればCB650RとCBR650Rも選択肢に入りますが、CBR650RとZX-4Rでは、ZX-4Rの方が前傾が浅いという特徴があります。前傾度の差は顕著で、ZX-4Rの方はちょっと慣れれば長時間走れる人も多そうです。CBRは普通の人には過酷です。楽という人は猛者なので、前傾にかなり慣れている人以外は鵜呑みにしない方が無難です。スペックや実際の速さはほぼCBRが上を行っているので、2台の走行フィーリングを比べてみてあとはどちらか、ということになります。姿勢の楽さを求めると、CBRよりZX-4Rが楽ですが、より楽なCB650Rがあります。

ZX-25Rと4Rは、およそ車体は同じでポジションも近いので、とにかく上まで回したい人、25Rのエンジン音が好きな人は25R、街乗りを静かに普通に走りたい人は4Rという分岐になっていくでしょうか。

これらのうち、試乗してじっくり比較できない人であれば、無難なのはZX-4RとCB650Rです。CBRの前傾は慣れている人以外は後悔するレベルに残酷なのと、25Rはどうしても下のトルクが薄いので、万人におすすめはできません。

デメリットが薄く、おそらく買って後悔はしないZX-4Rという4気筒エンジンモデルは、とてもありがたい存在だと、運転しながらしみじみ思いました。