バイク比較

2023.09.02

予想を裏切られたバイク

今回は、事前の予想を裏切られたバイクたちを紹介します。

1.ZX-4R

1台目は、最近発売されたカワサキZX-4R。こちらは4気筒高回転エンジンのスポーツバイクで、吊るしでサーキットを走れるZXシリーズの400cc版です。

250ccのZX-25Rと車体は共通で、シート高など多少違いがあるもののおよそ同じような感覚で乗れるでしょう。

ZX-25Rの方は超高回転エンジンで、18,000回転回ります。ZX-4Rはそれに比べると回転数が低く、16,000回転となっていますが、16,000回転でも十分に超高回転エンジンです。

さて、この高回転型4気筒エンジンを積むZX-4Rですが、事前予想ではZX-25Rほどではないものの低速が扱いづらいと考えていました。同じ400cc4気筒エンジンのホンダCB400スーパーフォアがVTECというバルブ制御機構を使って低回転トルクを確保しているところ、ZX-4Rはそのような機構はなく、さらにより高回転型のエンジンなので、CB400よりも低速は厳しそうです。

という事前予想に反して、実際はとても低速が乗りやすく、トルク感に不足がありません。多少の前傾姿勢以外、万能感の高いバイクとなっています。

クイックシフターやトラクションコントロールアシストスリッパ〜クラッチなど、装備が充実しているので、その面でもとても扱いやすいのが特徴です。

金額は110万円台と少々お高めに感じるかもしれませんが、仕様や海外の価格からすると国内価格はバーゲンプライスで、とても割安に買えるお得なバイクです。排気量が大きい方が高くて当たり前と考える人も多いですが、実際の製造コストは排気量に比例せず、主にメーカーの利幅が違います。400ccに100万なんて、と食わず嫌いせず、気になる人は一度試乗など体験してみることをおすすめします。

2.KLX230SM

次はカワサキのKLX230SMです。こちらはオフロード車体にオンロードタイヤをつけたモタード仕様で、軽量な車体で運動性能が高く、ハードなオフロード以外どこでも走れるようなキャラクターのバイクです。

オフロードモデル特有の乗車姿勢やハンドルポジションなど、多少慣れが必要ですが、ヤマハセローなどと同じく日常の相棒として優秀です。タイヤサイズとエンジンセッティングをオンロードに向けているため、一般的なオフロードモデルよりも公道は走りやすく、オールマイティーに使えます。

230ccという排気量のため、パワーは期待できず、瞬発力にはある程度期待できるものの、高速域などは厳しそうだと予想していました。また、低速域で直進安定性があまり良くないので、高速道路はどうなってしまうのか、と不安でしたが、実際には高速走行が非常に快適で、余裕を持った走りが出来ます。

時速100km走行は余裕で、120kmも出せます。さすがに120km連続走行は負荷が大きいものの、100km連続走行は特に問題ないので、230ccという排気量から考えると相当に優秀です。ハンドルの振動もあまりなく、手のしびれなどに悩まされることはありません。

近距離移動の使いやすさは予想通りでしたが、高速道路走行がここまで使いやすいとは全く想像していませんでした。

高速走行の使いやすさから、旅バイクとしてアドベンチャー化を進めており、この動画公開前後くらいにラジオ系チャンネルで話していると思いますので、気になる人はそちらも回ってみてください。

3.モトグッツィV7

イタリア最古のバイクメーカー、モトグッツィのロングセラーモデル、V7は、縦置きVツインエンジンを積んだバイクです。

縦置きエンジンは、エンジンのクランクシャフト回転軸が進行方向になっていて、アクセルONで車体がやや傾く特性があります。そういった予備知識から、かなりクセが強いバイクと思って臨みました。

実際は、確かにエンジンをかけるときなどに車体の横の動きは感じますが、それ以外ではほぼ特徴的な動きを感じません。全体的にクセがなく乗りやすいバイクで、非常に扱いやすい部類のマシンになっています。低回転トルクが大きく、街乗りから高速道路まで加速力は申し分ありません。車重は200kg以上ありますが、ヤマハの万能ミドルバイク、XSR700に近い使いやすさを感じます。

また、縦置きエンジンの特性もあり旋回が非常に楽しく、エンジンのトルク感、Vツインエンジンのフィーリングも気持ち良い、趣味性の高いバイクです。一般的に、クセがないバイクは面白みが少なく、逆に個性があって楽しいバイクはちょっと扱いづらいところがある、というものが多いですが、モトグッツィV7は扱いやすさと楽しさが両立している、高度のスグレモノです。

モトグッツィは、現在853cc空冷Vツインエンジンと1,042cc水冷Vツインエンジンの2つになっているようで、規制により空冷の存続が難しくなるとこの味わいを体験することが難しくなるかもしれません。

現行は853ccのエンジンですが、以前は744ccでした。排気量の変更により、名前と合わなくなってしまいましたが、これは排ガス規制によるエンジン変更のようです。

4.SV650X

スズキSV650Xは、SV650の派生モデルです。SV650をベースにセパレートハンドル化されて、シートその他細かい部分が変更されています。

イメージではオシャレ系カスタマイズバイクで、見た目優先で仕上げられたバイクに見えます。

写真では、セパレートハンドルにしてはハンドル位置が高めなことから、前傾姿勢は大したことがないように感じる人も多いかもしれません。セパレートハンドル入門にも良さそうに感じますが、そうやってナメてかかると痛い目にあいます。

前傾率を計算すると、175cmで50%前後と、レベルは隼と近い水準、ホンダの本格派CBR600RRとも近くなっています。

これは、ネイキッドのSV650に対してそのままハンドルを付け替えているため、ハンドルが前方に遠いことによります。

前傾率は、ハンドルの低さを見てしまいがちですが、実際には前方の遠さの方が影響が大きく、上下位置の影響は少なめです。

さらにSV650Xの場合、シートの形状から着座位置はタンク直後にはならず、停止状態で前目に座って確認するときより実際に走行している時の方が前傾になりやすくなっています。

この数々の特徴により、SV650Xはぱっと見の雰囲気よりだいぶ前傾姿勢で、サーキットマシンのレベルに次ぐ最もハードなゾーンになっています。

このように乗車姿勢は慣れないとかなり厳しく、想像より疲労が大きいバイクでしたが、Vツインエンジンが想像以上に心地良く、カッコイイスタイルと、SV650の素性の良さから、抜群に走りが楽しいバイクだった、ということもいい意味で裏切られました。

5.DAX125

ホンダDAX125はスーパーカブの派生モデルというイメージが近く、グロム、モンキー、ハンターカブなど125ccシリーズとエンジンのベースは同じです。

DAXはモンキー125とメーターなどを共用するなど、カワイイ系のバイクになっていますが、6-2遠心クラッチを採用しており、クラッチレバーがありません。また燃料タンクが前になく、シート下にあり、膝の位置には挟むポイントがなく、スクーターなどのように膝の安定感はありません。

レビューなどでは、ニーグリップできないと強調されていることも多く、走りづらいという意見も散見されました。

実際に走ると、膝は浮いているものの、コントロールしづらいことはなく、非常に乗りやすいバイクです。前後荷重移動や足首をしっかり固定するなど基本に忠実に運転すれば、思い通りに動かすことが出来ます。

ハンターカブなども同じ構造ですが、ワインディング走行なども十分楽しめるので、心配はいらないでしょう。

6.SCR950

ヤマハSCR950は、クルーザーBOLTの派生モデルで、スクランブラースタイルのバイクです。初めて見たのはとあるサービスエリアの駐車場で、特徴的なスタイルが目を引きました。

ぱっと見は乗りやすそうなバイクかと思いましたが、紹介動画などでは酷評されていたりと、クセが強くて乗りづらいバイクというのが世間一般のイメージになっているようです。

実際に乗ってみると、何となく座るとシートの前の方に落ち着くのですが、その場合は確かにいろいろ不具合があり、足がステップに干渉して足が着きづらい、エアクリーナーボックスらしきものが膝に当たって落ち着かない、など運転しやすいとはいえない感触です。

ただこれは、そもそも座る位置が良くないか、体のサイズに合っていないことによるもので、少し後ろの位置に座ると各所に干渉しなくなります。こうすると抜群に乗りやすくなり、太いトルクと空冷Vツインエンジンのフィーリングが何とも心地良く、とても良いバイクだと評価が一変します。

後ろに座ると着座位置が上がるので、身長が低いと難しいことから、おそらく180cmくらいが適正、175cmくらいはないと難しいかもしれません。

身長が合えばとても乗りやすいバイク、ということがわかりましたが、身長の低い人が酷評して評判が定着したのでしょうか。いずれにせよ、車重の重さはありますが、実は乗りやすくて楽しいバイクです。

ベース車のBOLTは2022年で生産終了しており、正式には2023年に終了の発表がありましたが、残念ながらヤマハの大排気量空冷Vツインはもう復活することはないでしょう。

7.ELIMINATOR

カワサキエリミネーターは、Z400、Ninja400と同じエンジンを積んだクルーザー系立ち位置のモデルです。

Z400は時速100km前後の走行でハンドルの振動が厳しく、長距離長時間走行をするのが辛いので、エリミネーターもある程度キツいかと思いましたが、実際に高速道路に乗ると、意外にもハンドルにはほぼ振動が伝わらず、手がしびれることもありません。シートは振動するので、エンジンの振動は変わらないと思いますが、フレームなどの対策でハンドルの振動は軽減されているようです。

おかげでクルージングもある程度余裕を持ってできるので、Ninja、Zの400ファミリーではエリミネーターが一番汎用的に使えるバイクになっています。

エリミネーターの話はラジオ系チャンネルで話しているので、良かったらそちらのチャンネルも回ってみてください。