EクラDCTに勝つか、MT-07 Y-AMT走ってレビュー

1.Y-AMTの性能

まずはY-AMTの性能からいきましょう。Y-AMTはクラッチ操作を自動でやってくれて、オートマにもなり、マニュアル操作もできる仕組みです。最近一般的なクイックシフターと比べると、Y-AMTの方がいわゆる上位互換性能で、マニュアル操作の時にもクイックシフターを扱うのと同じように動きます。

 YAMAGA MT-07 Y-AMT

YAMAGA MT-07 Y-AMT

クイックシフターは当然、普通のマニュアルなので停止時にクラッチを切りますが、Y-AMTは常に左手が自由です。さらに止まると勝手に1速になってくれるので、3速くらいのいい感じのエンブレで停止して放置でもOKで、止まった後はそのまま走り出せます。

シフトチェンジはクイックシフターと同じように、アクセル操作不要で自在にチェンジができて、減速から停止がクイックシフターより手間が少なく、快適に走りができます。このような仕様なので、全体的にクイックシフターが超高性能になったようなイメージと思って良いでしょう。

走行面はとても良いですが、操作面について惜しいところもあるので、その辺は後ほどまとめてお話しします。

2.シフトショック

一般的なクイックシフターは、特に2速アップ時など回転数変化が大きい時にシフトショックがありますが、Y-AMTのシフトチェンジでは、クイックシフターよりショックが少ないというかほぼありません。何速へのアップでもダウンでも、シフトチェンジ自体のショックは感じないので、とてもスムーズに走れますね。

ショックはほとんどないものの、シフトチェンジの音はだいぶ大きいです。何と言うか、バカでかいです。ガシャコン音が。要は普通のマニュアル車と構造が同じなので、マニュアルのシフトチェンジ同様の音のはずですが、挙動がスマートなので音が大きく感じるのだと思います。

もちろんシフトダウン時にエンジンブレーキが増えるのは、他のオートマ車などとも同じですが、電スロのクイックシフターと同じく、エンジンの回転はしっかり合わせてくれるので、タイヤも常に安定して接地します。

変速時のエンブレなど挙動変化は、マニュアルのMT-07の通り、マスターオブトルクマシンなので、もともとトルク変化がダイナミックということもあり、アグレッシブな体感は変わりありません。

3.オートモード

オートモードは当然シフト操作不要ですが、随時介入もできます。始動時は常にオートのDになっていて、Dのまま走るか、D+にするか、またはMTにするかの3択です。

Dは早めのシフトアップで、回転数がそれほど上がりません。ギア高めなのでエンブレも少なめで快適に走れて、マスターオブトルク感を抑えた紳士的なMT-07というイメージになっています。

D+は低めギアが使われて、エンジン回転が比較的高めになります。自分で介入して早めにシフトアップしても、勝手にシフトダウンしてくれるバリバリ仕様で、市街地はちょっと走りづらいかもしれません。

個人的には中間くらいがちょうどいいと思いますが、オートマのシフトタイミング設定もカスタマイズできると、より自分の手足感がありそうで、そんな機能があるととてもありがたいです。

4.ボタン操作

MT操作時は、左手のボタンで変速をします。人差し指側でシフトアップ、親指側でシフトダウンなので、ボタンの場所さえ慣れれば操作は簡単です。

オートならシフトボタン操作は意図的な介入時以外使いませんが、マニュアルは常にボタンで変速することになりつつも、減速や停止はいじらなくても平気なので、加速時以外あまり触らなくても結構いけます。

ホンダのDCTもシフトボタンの位置は同じようなところで、Y-AMTもDCTもウィンカーやホーンボタンと近いので、慣れるまで押し間違えるかもしれません。筆者はよくウィンカーを消そうとして、シフトダウンしています。

ボタン操作自体は簡単で、ちょっとすると慣れてくるので、スムーズにいけるでしょう。

5.DCTとの違い

ホンダのDCTは挙動や操作系が似ているので、違いをまとめてみます。

まずDCTは構造上クラッチが2つあって、奇数偶数段が随時切り替わるので、変速ショックはあまりありません。アフリカツインのDCTは多少ショックを感じなくもありませんが、世代が進むにつれて性能が良くなっているので、あまり気にならない水準と思います。Gold Wingは変速ショックゼロと言っていいくらい、シフトチェンジしていることを注意しないと感じません。まさに快適そのもので、これ以上の高級ツアラーはまず他に出てこないでしょう。

Y-AMTの変速はDCTとは違って構造がシンプルで、普通のマニュアル操作を機械がやってくれています。クラッチが一つで普通にギアチェンジしているので、理屈の上ではDCTより変速ショックがあるはずですが、不思議とフィーリングはそんなに違いません。ショックを感じないようにかなり高精度にコンピューター制御しているのか、とてもスムーズに変速してくれます。

ただ、先ほどお話しした通り、Y-AMTは変速の音がだいぶ大きいので、スムーズさに対して最初ちょっと違和感があります。DCTはショックが小さく変速音も小さいので自然ですが、Y-AMTは変速時に普通にギアがスイッチするので、マニュアル同様のガシャコンと作動音がします。体感のショックが小さいので、音が大きく感じられるというところでしょう。

音だけ大きいのはちょっとネガティブなものの、Y-AMTは構造がシンプルな分、DCTより軽量です。そのおかげで素のMT-07と重量増が最小限の4kgアップ程度ですんでいますが、DCTのホンダNC750Xはマニュアルモデルより10kg重くなっています。Y-AMTの方が軽快感を損なわないので、こちらの方がアクティブに走れる感覚もありますが、軽量感と音などの高級感のどちらを選ぶかは好みです。

DCTはクラッチが2つある分、オイルメンテナンスの手間とコストが余計にかかるのがちょっとしたデメリットで、Y-AMTは構造はMTのままなので、その辺は普通です。

個人的には、DCTほど複雑化せずにここまでできるなら、シングルクラッチのY-AMT方式で良いかなと思いますが、Gold Wingのような車種はDCTの高級感がうれしいので適材適所ですね。

6.Eクラッチとの違い

Eクラッチの方はY-AMTと構造的に似ているので、Y-AMTマニュアルモードなら操作系以外挙動が近いです。

Eクラッチはギア選択が常に完全にマニュアル操作なので、1速から6速まで常に自分で制御します。5〜6速のまま停止するとギアが下がりにくくなるのも普通のマニュアル車と同じで、その場合は半クラなどいくつかの方法でちくちく下げていくなど、単純にクラッチ操作だけを機械がやってくれるという動きになっています。

2〜3速のまま止まると、止まってから1速に下げることになるので、止まる前に1速まで順次下げるかどうするか、この辺は好みです。ただ、1速のエンブレは強いので、タイミングには慣れが必要です。

それに対してY-AMTは、減速していくと1速に勝手に下げてくれるので、減速から停止の流れでシフトダウンしなくても大丈夫で、これはEクラッチに対する優位性になっています。正直Eクラッチは下まで落とすのが面倒になってくるので、Y-AMTの方がありがたく感じますね。

Eクラッチはいざとなるとクラッチ操作ができるので、極低速で半クラ走行したいときなどは慣れた感覚でいけるのが良いところです。Y-AMTはクラッチレバーがなく、低速走行はアクセルとリアブレーキなどでうまくやりくりするので、やや慣れが伴います。

マニュアルシフトチェンジの方法は、Eクラッチは左足の上下なので普通のマニュアル車と全く同じです。Y-AMTは左手のボタンでの操作なので、DCTなどに慣れているとすぐに順応できますが、そうでないと人によって慣れるまで多少時間がかかるかもしれません。

このようにEクラッチとY-AMTは、メカの構造は方向性が近いものの、操作系がだいぶ違います。メカは違えど操作感が近いDCTとは逆ですね。ここはだいぶ好みがわかれるでしょう。

一般的な走行感のみなら、EクラッチよりY-AMTの方が1まわり便利になっていて、オートにもできるので有能です。個人的にお気楽操作目的でどちらかを選ぶかとなると、今の仕上がりならY-AMTの方が好きです。

Y-AMTに乗ると、Eクラの便利感のやや中途半端さを感じてきますが、電スロEクラが停止時に1速まで下げてくれるようになれば、Eクラを選ぶと思います。おそらく近い将来そうなるでしょう。

7.MT-07の良さ

MT-07とY-AMTの相性が良いのも、Y-AMTに好印象を持つ部分かもしれませんが、現行MT-07はとても良いバランスに仕上がっています。

筆者は以前ファミリーのXSR700に乗っていて、今は手元にありませんが、XSR700とMT-07は寸法その他違って、乗り味に差はあるもののかなり近い存在です。

電子制御をあまり搭載していない世代のXSR700と比べると、現行の電スロMT-07はだいぶ走りやすいです。さらにY-AMTはより走ることに集中できるので楽しいですね。Y-AMTとの組み合わせがより良いバイクに感じます。

電子制御を追求していくと、こういった自動化が自然だと思うので、電子制御が好きな人は相性が良いと思います。逆にメカを自分で操作したい人は、旧世代のMT-07やXSR700の方が手に馴染むかもしれません。

現行MT-07とY-AMTは相性が良く、軽量ビッグスクーターのような付き合い方もできます。オートにしておくと気分はバカっ速いスクーターになるので、キャリアをつけて積載力を確保したりすると、利便性全振りバイクに変身します。

8.ケツ痛注意報

MT-07は姿勢が直立に近いので、どうしてもケツ痛にはなりやすい方です。ケツ痛注意報いうより警報くらいか。人によって体感は違うと思いますが、ケツ痛になりやすい人は対策が必要だと思います。

XSR700の快適シートのようにはいかず、普通に市街地を1〜2時間くらい走っていたら、ケツ痛になりそうだなこれは、という感じがしてきます。

強靱なケツの持ち主以外は、できるだけ後ろ目に座ったり、ゲルザブを敷いたり、シート加工したりなど、何らか必要な匂いを感じます。

9.値段

車両価格は、MT-07スタンダードが968,000円のところ、Y-AMTは1,056,000円です。マニュアルモデルより88,000円高くなっています。ホンダCBR400R E-Clutchが1,089,000円ですが、快楽を追求していくなら、MT-07 Y-AMTの方がお得だと思います。

MT-07は、オイル量は通常交換2.3Lと少なめ、バッテリーは実売1万円くらいと高くなく、純正装着タイヤが前後5万円弱からと、サイズにしてはお手頃と、いろいろ優しい設定なのがうれしいです。

また、ホンダのEクラッチのようにEクラモデルだけでないのはありがたいですね。ホンダはDCTモデルもDCTだけになりつつあるので、マニュアルモデルがどんどん消え去っていきそうですが、ヤマハは今後どうするんでしょうか。

機能を足してその分金額を上げて、利益も増えるというのはメーカーの商売ではよくある話ですが、マニュアルモデルも選択肢として残していってもらえると、ユーザーとしてはありがたいと思います。DCTは構造がかなり違うので、マニュアル車との併売のロスが大きいと思いますが、EクラッチやY-AMTは言ってみれば既存構造に機能のポン付けで、併売の労力も極端に大きくないと思われるので、併売していってほしいところですね。

10.惜しいところ

惜しいところを端的に言うと、「シフトペダルをください」。

左手がとても忙しいです。Y-AMTはシフト操作とウィンカーとホーンとディスプレイ操作と、みんな左手でやるので、左手の仕事が多くて器用にこなす必要があります。その分クラッチ操作がなくなっているとはいえ、親指操作が忙しいので負荷を分散したいですね。

四輪の外車マニュアル車は、シフト操作とウィンカーとオーディオ空調操作など、みんな左手でやらされて辛いので、外車のマニュアルもちょっとイヤですが、それを思い出します。Y-AMTは足でシフトチェンジできたら適宜分散できて便利なので、ボタン操作でも足でもできれば理想的な操作系になりそうです。

あとは前半で話したとおり、変速音が大きく感じます。DCTなどに慣れていると音のでかさにちょっとビビりますが、ただこれは慣れでしょう。

オートのモードがDとD+からの選択ですが、Dはわりと普通の市街地走行、D+は低めのギアが選択されるので、ガンガン加速したい時などに選ぶと良いです。

どちらにしても介入したくなることも多く、Dで必要に応じてダウンするなどの介入をするか、D+でアップ介入するか、どちらもちょっと微妙です。では全てマニュアル操作にするかとなると、今度は左手が忙しいジレンマになるという、自分の乗り方のちょうどいいポイントに合う人でないと、乗り方をマシン特性に補正していく必要があるので、慣れるまで時間がかかるかもしれません。

とは思いますが、結局みんな慣れなので、たぶん慣れれば体に馴染んでくるでしょう。

11.まとめ

ではまとめていきましょう。MT-07 Y-AMTに向いている人は、オートマがいい、でも求めているのはスクーターではない、静けさより軽さの方がいい、加速力のあるバイクを求めている、お金をしっかり管理している、ケツが硬い、指の技量に自信がある。

Y-AMTはオートマとしては、ホンダのDCTの方が有能な部分もあり、Eクラッチの方が自由度が高い面もあり、といったところで、Y-AMTはその中間のような位置づけです。たぶん自動制御はこれくらいがちょうどいいバランスなのだろうなと、感じさせてくれる仕上がりです。

個人的には重たいDCTより、車体も心も軽いY-AMTの方が日常の相棒になれそうで、Eクラッチの1速まで落とすの面倒だなと思う気持ちも解放してくれるので、ペダル変速もできたらY-AMTイチオシかなと思います。