苦痛もご褒美、クセになるクセ強バイク

今回は、しばらくぶりの人、初めての人、楽したい人、が避けた方が良いかもしれない、でも噛めば噛むほど味が出て沼りやすい特徴強めバイクのお話です。

1.縦置きエンジン

縦置きエンジンは前後方向にクランクシャフトが配置されているために縦と呼ばれますが、直列だと前後にエンジンが並び、V型や水平対向は左右に並びます。ほとんどのバイクは横置きエンジンで、縦置きエンジンは数が少なく、予備知識なしで初めて縦置きエンジンバイクに乗ると違和感があると思います。そのため、初めてのバイクやしばらくぶりの人は、一般的な横置きエンジンを選んだ方が無難です。

 Motoguzzi V7

Motoguzzi V7

たとえば筆者のモトグッツィV7は、エンジン始動と停止で横の力を感じます。停止状態ではそこそこ力を感じるので、知らずにうっかりすると倒れそうになるかもしれません。慣れないうちはサイドスタンドを立てて始動停止したほうが安心です。

走行中には横に押される力は感じません。しかし、シフトダウン時にクラッチを切ってブリッピングすると、駆動力が切れている状態では横に振れやすくなります。さらに、ブリッピングで回しすぎると大きく横に振られるため、ジャストの回転数で合わせたいところです。縦置きエンジンは総じて旋回感覚がとても心地良く、直進安定性も申し分ありません。全体的に乗り味は非常に優れています。

BMWには水平対向ツインエンジンのRシリーズが長らく活躍しています。現行はR12とR18がありますが、以前のイベントでR20コンセプトも展示されていたことがあります。モトグッツィは全車Vツインエンジンです。タンクのすぐ下にヘッドが張り出している特徴的な外観で、目立つのでよく出先でカッコいいと褒められたりします。

ホンダGold Wingも縦置きエンジンで、水平対向6気筒エンジンを積んでいます。Gold Wingは縦置きながらバランサーによって対策されているらしく、エンジン始動時なども横向きの力を全く感じません。さすがぬかりない完成度のバイクです。

2.エンジン回転上下が速いバイク

エンジンの回転上下が軽くスピーディーなバイクはレースなどにも向くので、スポーツバイクは速い傾向です。スピーディーに動いて良い反面、自分もスピーディーに操作しないとギクシャクしやすいので、操作にはある程度慣れが必要になります。

ギアチェンジは高速に操作して、クラッチ操作も切りすぎず、回転が落ちすぎないように戻すなど、キビキビ操作するとスムーズに動いてくれます。シフトダウン時のブリッピングもシビアに合わせないとショックが出やすいので、こちらもバイクの癖をつかむまでガクつくかもしれません。

 YAMAHA SR400

YAMAHA SR400

例えばヤマハのSR400やカワサキW230のようなバイクは、あえて回転上下がゆっくりになるようフライホイールなどが重めになっていて、こういうバイクはかなり楽にゆっくり扱えるため気楽に付き合えます。ただ現代はクイックシフターが標準装備になっているバイクも多く、上下クイックシフター搭載バイクなら全く気にせず雑に操作してもガクついたりすることがなく、かなり楽になりました。

3.前傾が深いバイク

以前の動画で前傾率ランキング国内版、外車も含めた総合ランキングを作っていますが、前傾度合いが一定以上深いと乗車感覚、操作感覚が変わってくるので、免許取り立てや長いブランク後には一旦避けた方がよさそうです。

一般的にはバーハンドルの方が操作の難易度は低めです。また、リターンで年齢が変わっている場合、いきなりでは体が硬くてついてこないなど、思いのほか負荷が大きくなることもあります。そのため、筆者の前傾率計算では40%以下くらいがおおよそ無難です。それを超えるものは、ある程度心の準備をして臨むのが良いと思います。

 YAMAHA YZF-R7

YAMAHA YZF-R7

前傾姿勢自体は理にかなっていて、加減速などでも体が安定して走行風の抵抗も少なくなります。体幹筋力のトレーニングにも有効なので、バイクに慣れている人はぜひDUCATI パニガーレV4、HONDA CBR1000RR-R、YAMAHA YZF-R1など、公道モデル最高峰の前傾レベルを体験してみてください。

4.電子制御がないバイク

 HONDA CB1000F

HONDA CB1000F

今時、排気量が大きいバイクはトラクションコントロールがほぼ標準で、排ガス規制の関係もあってスロットルも電子制御が増えました。電子制御スロットルは、慣れないうちはモード切替でパワーを弱めにもできるので、安全に扱いやすく便利な装備です。

排気量が大きいバイクの1台目などは、各種電子制御が充実している方が安全ですが、コーナーリング中にアクセルを全開にするなど暴挙に走ると、さすがにトラクションコントロールも助けられず、冒頭の例のように転倒するので過信は禁物です。他にも電子制御スロットルの場合は、上下クイックシフターに対応できるので、より全体の操作がシンプルにできます。ホンダのEクラッチも電子制御スロットル対応版がつくられるなど、今後さまざまな箇所が物理接続しなくなると思われるので、より乗り味は変わっていきそうです。

電子制御が少ないバイクは珍しくなってきたので、機械式時計のように逆にニッチな需要はありそうですが、そういうバイクも味があっておもしろいです。機械と対話しながら走る感覚が強いので、もしかしたら飽きにくいかもしれません。

5.ABSがないバイク

ABSは現在必須装備になっていて、125cc以下を除く新車には全て標準装備されています。125cc以下はABSか前後連動ブレーキのいずれかが必須になっているので、スクーターなどは前後連動ブレーキもあります。

2020年以前くらいまでの生産車両には、ABSがないものもあります。そのため、それほど古くない中古車でも、車種によってはABSが装備されていない場合があります。

論理的には、ABSがない方が限界制動距離が短くなりやすいこともあり、ABSなしモデルを薦める人がたまにいます。ただし、サーキットなどで限界ブレーキングをやりこまないと再現は難しく、刻一刻とコンディションが変わる公道の路面で、常に完璧な限界ブレーキングができる人はほとんどいません。

そのため、素直にABSモデルを選ぶ方が賢明です。というより、フロントロックは即転倒につながるため、特別なこだわりがなければABSつきを選ぶべきです。

 YAMAHA SEROW

YAMAHA SEROW

唯一例外がオフロード車で、オフロードモデルのフロントブレーキは効きがゆっくりなものが多く、結構握りこまないとロックまで至らないので、初心者がABSなしモデルに乗ってもリスクは低めです。またオフロード車はダートコースなどで後輪をロックさせてテールスライドさせる走り方もあり、クセになる面白さがあります。ABS必須の現行モデルでもTénéré700をはじめ、オフロード走行用にABSを解除できる機能があるので、オフロード車をお持ちの方はぜひダートコースを滑ってみてください。

6.重いバイク

重いバイクは取り回しが疲れるのと、多少の傾斜でも動かすのが大変になるので、初めて行く場所に重いバイクで行くと思うとちょっと躊躇します。そんな風にいろいろな意味で心の負荷が大きいので、結果乗る頻度が減りがちになるのは重量級あるあるですね。

 HONDA CB400SFとHONDA CB1000F

HONDA CB400SFとHONDA CB1000F

重さは車重だけでなく重量バランスにもよるので、車重200kgで重いと感じるものもあれば、220kgで余裕があると感じるものもあるなど、バランスが安定しているバイクは車重があっても楽に感じます。おおむね設計が新しくなるほど重量バランスが最適化されて軽く感じやすいようなので、古めのバイクに手を出す時は特に重さ感が許容範囲か、あらかじめ確認する方が良いと思います。

どれくらいを重いと感じるかは性別や体型、筋肉量によるので人によって様々ですが、いずれにせよ扱うのに体感筋力が必要で、バイク用筋肉が鍛えられていない、しばらくぶりに乗る人が250kg、300kgなどに手を出すのは、もともと鍛え上げている人でないとまずまず無謀かもしれません。

重量級バイクはどっしり安定した走行感覚のものが多いので、これはこれでとても魅力的です。

7.ピーキーレスポンス

ちょっとアクセルを動かすとドカンと加速するようなピーキーバイクは、最近は少ないと思いますが、以前はたびたび新型車でも出ていました。MT-09の初期型などはピーキーな傾向と言われていて、全開モードの挙動がシビアで大変という感想がよくありました。

現行では多くの車種が自然な方向になっているのでおよそ大丈夫ですが、中古車を探す際には注意しておくと良いと思います。

8.キックスタートしかない

現行モデルにはセルモーターがあって当たり前なので、普通気にしないと思いますが、5年ほど前まで生産していたSR400は結構な数が現存しているので、うっかり手を出す人もいると思います。

 YAMAHA SR400

YAMAHA SR400

セルとキック併用のバイクはいいですが、SRはキックしかないので毎回キックスタートが必須です。エンストするとその場でキックが必要で、さらにエンストの時は通常よりちょっとエンジンがかかりにくい感じもあり、なぜかSRの時だけうっかりクラッチを離してエンストしてしまうなど、メンタルの問題か何か、いろいろ厄介だったりします。

右折待ちでエンストは絶対に避けたいですね。

とはいえこのキックスタートがわりと楽しかったりもして、始動時から自分で動かしている感が強く、愛着もわきます。古き良きバイク感を味わえるものの一つなので、気になる人はぜひトライしてみてください。

9.電動バイク

 KAWASAKI Z-e1

KAWASAKI Z-e1

誰が買うんだこんなもの、と思うみなさん、はい、その通りです。電動バイクは自宅で充電できますが、出先でのエネルギー補給が現状ではかなり難しいです。

Gachacoというバッテリー交換サービスに対応しているモデルはステーションがあれば補給できますが、東京と大阪の一部にしかまだありません。独自規格のバッテリーはそもそも補給が難しいですが、ものによっては四輪用の200Vに刺さるアダプタがあればどうにかできます。

航続距離は30kmから50km、多くて80kmくらいがせいぜいで、100kmを超えるものは数少なく、正直決まったルート走行でないとまだまだ実運用は難しいのが現実です。

ただ走行感覚は抜群で、ゼロスタート加速力は最速クラス、アクセルとブレーキを使って足を着かずに完全静止もしやすいなど、都市部の走行では群を抜いて扱いやすい乗り物になっています。

エネルギー補給速度や持続力のブレイクスルーがあれば、間違いなく主流の乗り物になりそうなので、心の余裕がある人はぜひ体験してみてください。

10.体型に合わないバイク

身長に対して大きいバイクや小さいバイクは、およそ乗りづらく感じます。ちまたのバイクレビューを見ても、大きい人はシート高が低いバイクの評価が低め、小さい人は大きめバイクに後ろ向きだったりもしますが、体型に合わないとハンドル操作などにも直結するので、乖離するほど乗りづらく感じるのは自然です。

こればっかりは正直メリットはなく、できるだけ体型に合うバイクを選ぶことをおすすめします。多少ならシートやハンドルの調整でどうにか改善できることもあるものの、それも試行錯誤になるので、初めから合うものを選ぶのが良いと思います。

 HONDA CB1300SB

HONDA CB1300SB

ちなみに、シートがフラットで前後着座位置の自由度が大きいものは、どうにでもなることが多いです。筆者の場合、ホンダのGROMやヤマハSR400はフラットシートで自分にちょうどいい位置に座れるので、サイズが小さいものの乗車中は全く小さく感じません。

シート高875mmのTénéré700に乗っていて、GROMにも加工なしで普通に乗れているので、GROMってスゴいなといつも思います。エストレヤやW230のようにえぐれたシートは前後に移動できないので、全体的に窮屈感が大きいです。

身長に対してシートが高すぎるのも同じように不具合が大きいと思うので、無理はしないのがいいですね。

体型相性は例外ですが、ネガティブに感じるクセがあるバイクは逆に唯一無二のおもしろさを持っていることも多く、食わず嫌いせずいろいろチャレンジしてみると、自分の好みにはまるバイクが見つかるかもしれません。筆者は今後も気になるものがあれば積極的にトライしていきたいと思っています。