フルカウルバイク、前傾ヤバさランキング【国内全30車種】
2024.02.25
ヤマハのバイクは、美しいデザインの裏に、どこか挑戦的で独特な個性を持っています。見た目は上品でも、走り出すと一気に本性を現す。そのギャップこそが、ヤマハらしさの象徴といえるでしょう。「クセが強い」と言われることもありますが、それは“操る楽しさ”を何よりも大切にしている証です。
この記事では、筆者が所有するヤマハ車を例に、その魅力や特徴を紹介していきます。現行ラインナップや売れ筋の傾向、メーカーとしてのこだわり、そして今後の展開についても触れていきます。ヤマハというブランドが持つ魅力を、あらためて見つめていきましょう。
YAMAHA MT-09
ヤマハの現行ラインナップの中でも、最も注目を集めているのが「MT-09」シリーズです。MT-09は、いわゆる“ストリートファイター系”の代表格であり、スポーティさと実用性のバランスが非常に優れたモデルとして知られています。
スタンダードモデルの価格はおよそ125万4000円。かつて100万円前後だった時代を思えば高価に感じますが、近年は他メーカーの値上げが著しく、むしろMT-09は「ユーザーに優しい価格」と言える状況です。同クラスのカワサキZX-4RやスズキDR-Z400Sが120万円台であることを考えると、その性能と装備を考慮したコストパフォーマンスは際立っています。
MT-09シリーズの特徴は、エンジン性能だけでなく、サウンド面にも強いこだわりがあることです。ヤマハは吸気音のチューニングに力を入れており、エアクリーナーボックスカバーには「AAG」と呼ばれる開口部を設け、吸気サウンドをライダーに直接伝える構造を採用しています。2本の吸気ダクトにより、回転数が上がるほど音圧が高まり、爽快な加速感を演出します。まさに“音も走りの一部”という、ヤマハらしい設計思想です。
YAMAHA MT-09 SP
さらに上位モデルの「MT-09 SP」では、サスペンションにオーリンズ製リアショックを採用し、ブレーキにはブレンボを装備。スマートキー対応など、装備面も充実しています。価格はスタンダードより約20万円高い設定ですが、足回りの完成度を求めるライダーには十分な価値があります。
YAMAHA Tracer9 GT
このMT-09シリーズをベースにした派生モデルも豊富です。ツアラー仕様の「Tracer9 GT」は電子制御サスペンションを搭載し、160万円台という価格ながら豪華な装備を実現しています。上位の「Tracer9 GT+」では、アダプティブクルーズコントロールやオートマチック変速機構「Y-AMT」を採用し、より快適なロングツーリングを可能にしています。
YAMAHA XSR900
また、ネオクラシック路線の「XSR900」もMT-09ファミリーの一員です。価格はMT-09より6〜7万円高い程度で、クラシカルなデザインと最新技術を融合した独自の存在感を放っています。販売台数こそZ900RSなどに比べると少ないものの、こだわりの強いファンに根強い支持を受けています。
YAMAHA XSR900GP
そして、話題の「XSR900GP」は、セパレートハンドルによる極端な前傾姿勢とレーシーなデザインで注目を集めています。独特のグレーカラーや精悍なスタイルは、往年のレーサーレプリカを思わせる一台です。ただし、その前傾姿勢はかなりハードなので、試乗の際には体格や用途をよく考慮する必要があります。
MT-09シリーズは、ヤマハの“今”を象徴するモデル群です。走りの楽しさと高い完成度、そして価格以上の満足感。その全てが、ヤマハというブランドの哲学を体現していると言えるでしょう。
YAMAHA MT-03
ヤマハのミドルクラスとして安定した人気を誇るのが「MT-03/MT-25」シリーズです。軽量で扱いやすく、街乗りからツーリングまで幅広くこなせるバランスの良さが特徴です。初めてバイクに乗る人にもおすすめしやすいモデルといえます。
近年では大型スクリーンなどの純正オプションも充実し、ロングツーリングにも対応できる装備構成になってきました。価格と性能のバランスが良く、通勤・通学から休日のツーリングまで、幅広いライフスタイルに寄り添う一台です。
MT-03は、フルカウルモデルの「YZF-R3」と共通のプラットフォームを採用しています。基本構造やエンジンは同一で、外観上の大きな違いはカウルの有無とハンドル位置にあります。MTシリーズはアップライトなポジションで気軽に乗れるのが魅力で、YZF-R3はよりスポーティなライディングを楽しみたい人に向いています。
排気量違いの「MT-25」や「YZF-R25」も同じ車体を使用し、主な違いはエンジン性能のみです。320cc版の方が余裕のある走りを楽しめますが、250ccにこだわるファンも多く、どちらも根強い人気があります。販売計画台数はシリーズ全体で約3,600台とされ、特にモデルチェンジの年にはランキング上位に顔を出すこともあります。
2024年モデルではYZFシリーズが大幅にデザイン刷新され、より洗練された印象になりました。その一方で、旧型の新車在庫が値引き販売されるなど、市場では新旧モデルが並行して流通する状況が見られます。
このクラスにはネオクラシックの「XSR」シリーズが存在しないのが少し不思議です。125cc、700cc、900ccにはXSRがラインナップされているだけに、250ccクラスの空白は目立ちます。日本では250ccという排気量が“車検不要”という理由で根強い人気を持つだけに、「XSR250」が登場すれば注目を集めることは間違いないでしょう。実際、カワサキの「W230」などクラシック路線の小排気量モデルも一定の成功を収めています。
なお、ヤマハは2025年に「XSR125」を2,000台規模で販売する計画を発表しており、今後このラインがどのように展開されていくかにも期待が高まっています。もし「MT-25」のエンジンを搭載したクラシックスタイルの250モデルが登場すれば、即座に購入するというファンも多いはずです。
MT-03/25シリーズは、ヤマハらしいデザイン性と扱いやすさを兼ね備えた万能モデルです。初心者にもベテランにも寄り添うバイクとして、今後も高い人気を維持していくことでしょう。
ヤマハといえば、スポーツモデルだけでなくスクーターの分野でも豊富なラインナップを誇ります。同クラスの中でも選択肢が多く、実用性と個性を両立している点が大きな特徴です。ホンダやスズキも多くのスクーターを展開していますが、ヤマハはその中でも特に幅広い層をカバーしています。
YAMAHA TMAX560
最上位に位置するのが、500ccクラスの「TMAX560」です。販売計画は年間500台と少数ながら、装備の充実度は群を抜いています。タイヤ空気圧監視システム、クルーズコントロール、電動スクリーン、メインシートヒーターなど、快適装備がフル装備されています。価格はベースモデルで約145万円、上級グレードの「TMAX560 TECH MAX」では164万円台となっています。競合モデルであるホンダ「X-ADV」が143万円台であることを考えると、やや割高にも感じられますが、快適性と仕上がりの質は非常に高い水準です。
YAMAHA XMAX
250ccクラスには「XMAX」がラインナップされ、こちらは販売計画1,800台と比較的多めです。ホンダの「FORZA」と競合し、販売台数も拮抗しています。取り回しのしやすさと十分な出力を両立しており、都市部から郊外まで快適に走れるオールラウンダーです。
さらに下の排気量帯では、155ccクラスに「X FORCE」と「NMAX155」が展開されています。NMAXは販売計画1,300台に対して早期に完売するほどの人気を誇り、メーター内にガーミン製地図を表示できる機能など、利便性も高く評価されています。車体重量も135kgと軽く、街乗りでの扱いやすさは抜群です。125cc超の排気量により高速道路にも乗れる点は、首都圏ユーザーにとって大きな利点となっています。
125ccクラスには「NMAX」「ジョグ125」「シグナス グリファス」「アクシスZ」など、多彩なモデルが存在します。ホンダが「PCX」、スズキが「バーグマンストリート125EX」や「アヴェニス125」など限られたモデル展開にとどまる中で、ヤマハは圧倒的なバリエーションを誇ります。さらに、前2輪・後1輪の独自構造を持つ三輪スクーター「トリシティ」シリーズ(300/155/125)まで取りそろえており、まさに“なんでも作るメーカー”といえる存在です。
また、電動モデル「E-Vino」もラインナップされており、環境性能にも積極的に取り組んでいます。ここまで多様なスクーターを展開できる背景には、ヤマハという企業グループの柔軟な発想があります。
ヤマハはもともと楽器メーカーとしてスタートし、音響機器、防音室、車載オーディオ、さらにはネットワーク機器やゴルフクラブまで手がける多角的な企業です。中でもヤマハ製ルーターは高い信頼性で知られ、クラウド環境のトップであるAmazon Web Services(AWS)のVPCとVPN接続できる品質を備えています。このような高い技術開発力が、バイクやスクーターの精密な制御技術にもつながっているのです。
もっとも、現在のバイク部門である「ヤマハ発動機株式会社」は、楽器メーカーのヤマハ株式会社とはすでに分社化され、資本関係もありません。それでも、共通する“ものづくりへの情熱”と“独創性”は確かに受け継がれています。三輪バイクのような挑戦的なモデルを次々と生み出す背景には、そんな自由な発想と技術の融合があるといえるでしょう。
ヤマハのスクーター群は、単なる移動手段ではなく、同社の創造性を象徴する存在です。快適性・デザイン性・実用性をすべて満たすそのラインナップは、これからも多くのライダーの生活に寄り添っていくはずです。
ヤマハの主力モデルといえばMT-09やXMAXシリーズが知られていますが、実は他にも個性豊かなモデルが揃っています。ここでは、あまり「売れ筋」とは言えないものの、魅力あふれるヤマハのその他のラインナップを紹介します。
YAMAHA MT-07
まずは「MT-07」系です。MT-07を中心に、「XSR700」「Ténéré700」「YZF-R7」といった兄弟モデルが存在します。販売計画はMT-07が約500台、XSR700が200台、YZF-R7が400台で、全体で1,000台前後です。Ténéré700も約500台と、アドベンチャー系としては健闘していますが、全体で見れば250ccスクーター「XMAX」1機種に及ばない台数です。
700クラスは、性能面で派手な数値が並ぶ大型クラスと比べると“わかりやすい強み”が打ち出しにくい面があります。しかし実際には、MT-07シリーズは非常に完成度が高く、扱いやすさと乗り味の上質さを両立しています。乗って初めてその良さがわかる“通好みのクラス”といえるでしょう。それでも、多くのライダーがより上位の900ccクラスへステップアップしてしまうのが現実です。
YAMAHA MT-125
続いて「MT-125」系を見てみましょう。このシリーズは、125ccクラスの「MT-125」「YZF-R125」「YZF-R15」「XSR125」で構成されています。しかし、販売面ではやや苦戦しました。計画台数6,800台に対し、初年度登録台数は約2,300台と、当初の目標の3分の1程度にとどまっています。
中でも「XSR125」は比較的健闘し、約1,600台が登録されましたが、他の3モデルは200〜300台前後と低迷しました。ローシート仕様やカラーバリエーション追加でテコ入れが行われていますが、全体としては在庫限りで終了となる可能性もあるようです。125ccクラスは世界的に見ても市場が限られており、日本では“フルサイズ125”というカテゴリー自体が難しい立ち位置にあります。そのため、ヤマハとしてもラインナップ維持に慎重な姿勢を見せています。
一方、大排気量クラスでは「YZF-R1」と「MT-10」がフラッグシップとして存在します。どちらも高性能かつ個性派ですが、現行モデルが“ファイナル”になる可能性も取り沙汰されています。ただ、レースシーンではV4エンジン搭載マシンが登場しており、もし市販化されればヤマハファンにとって待望のニュースとなるでしょう。V4ストリートファイターのような新ジャンルが誕生すれば、再び注目を集めることは間違いありません。
筆者自身も「Ténéré700」と「アフリカツイン」を所有していますが、どちらもビッグオフロードに分類されるモデルです。実際にはオフロードを走る機会が少ないため、「どちらか手放してもいいのでは」と言われることもしばしばです。それでも、Ténéréの軽快さとアフリカツインの重厚感、どちらにも異なる魅力があり、簡単には選べません。ヤマハのバイクには、そうした“理屈では割り切れない愛着”が生まれるのです。
ヤマハは、たとえ販売台数が少ないモデルでも、常に挑戦を続けています。ニッチな領域にも誠実に取り組み、独自のバイク文化を支えているメーカーです。今後もヤマハらしい情熱と発想力で、魅力的なモデルを生み出していってほしいと思います。