フルカウルバイク、前傾ヤバさランキング【国内全30車種】
2024.02.25
増車の誘惑に抗えない?手放せない魅惑のバイクたち。
バイクを愛するライダーにとって、「新しいバイクが欲しい」という思いと「今あるバイクは手放したくない」というジレンマはつきものです。気が付けば保管場所は“増殖無限城”と化し、まるでバイクに取り憑かれたかのような状態に陥ることも珍しくありません。本記事では、そんな「増車危険度」が高い、つまり一度手に入れると手放すことが難しい“魔性のバイク”たちを紹介します。
HONDA CB400SF
教習車としても多くのライダーに馴染み深い「HONDA CB400SF/SB」。一般的には「初心者にも扱いやすい優等生バイク」として語られることが多く、信頼性の高さと汎用性から“真面目なバイク”と評価されがちです。しかし、実際に乗ってみると、その印象は大きく裏切られます。
CB400SFは、ただの優等生ではありません。むしろ、“優等生のふりをした変人”と表現した方が正確でしょう。見た目はオーソドックスなネイキッドで落ち着いた佇まいを持ちながら、VTEC機構によって6500回転を超えると一気に“豹変”する特性を持っています。この突如暴れ出すパワー感は、まるで温厚な人が突然怒り出したようなギャップに満ちています。
実際、1速のギクシャク感や、低速域でのもっさりとした加速感は“優等生”的な快適性からは程遠く、街中ではその重さと取り回しのしづらさが目立つ一面もあります。さらに、教習車として使われていたとは思えないような取り回しの難しさも持ち合わせており、「なぜこれが教習車だったのか」と首をかしげる声も多いのです。
とはいえ、CB400SFの魅力はまさにそのギャップにあります。ひとたび高回転域に入れば、VTECが開き、猛烈な加速と独特の咆哮がライダーを圧倒します。この変貌ぶりは、一度体験すれば忘れられません。
一方で、同じ400ccクラスには、カワサキ「ZX-4R」のような真の優等生も存在します。ZX-4Rは低回転から高回転まで非常に素直で、街乗りもスポーツ走行もスマートにこなす完成度の高いバイクです。他にもヤマハ「MT-07」やスズキ「GSX-8S」など、近年は“非の打ち所がない優等生”と呼べるモデルが多数登場しています。
それに比べてCB400SFは、決して万人受けするモデルではありません。1速でガクガクする挙動、重くて立ちゴケしやすい車体、下道での低いモチベーション。そうした欠点を抱えながらも、「それでもCBが好きだ」というファンが絶えないのは、このバイクにしかない“クセ”が、人の心をつかんで離さないからに他なりません。
VTECの独特なフィーリング、回すことで顔を見せるもう一つの性格。そして、そのクセの強さがあるからこそ、複数台所有していても手放せない──。まさに「増車危険度MAX」の魔性のバイクと言えるでしょう。
MOTO GUZZI V7
イタリアの老舗ブランド・モトグッツィが生み出した「V7」は、クラシックな佇まいと個性的な機構を兼ね備えた、他には代えがたいバイクです。特に注目すべきは、モトグッツィならではの“縦置きVツインエンジン”という特異な構造です。この独特なエンジンレイアウトが、V7を唯一無二の存在にしています。
2020年代に入ってからはモデルチェンジが施され、従来のV7スペシャルやストーンも仕様変更されました。現行モデルでは、ストーンとスペシャルの装備差は縮まり、メーターやヘッドライトなど多くの部品が共通化され、どちらもシンプルで洗練されたデザインとなっています。
とはいえ、以前の「2眼メーター」「レッドストライプのツイントーンカラー」などを備えた旧モデルには、クラシカルな雰囲気を愛するファンの強い支持があります。AA氏が所有するのも、まさにこの“最後の2眼メーター仕様”のV7。現行型とはまた違った味わいを持つモデルです。
V7の魅力は、単なる見た目やスペックでは語り尽くせません。最大の特徴は、やはり「旋回感覚の楽しさ」にあります。スパッと倒し込みができて、コーナーが実に気持ちよく曲がれる──。この感覚は、他のどのバイクとも違う、モトグッツィ独自のエンジン配置がもたらすものです。車体をバンクさせたときの“軽快さ”は、一度体験するとやみつきになるレベル。多くのバイクが直進安定性や加速性能を重視するなかで、V7は「旋回すること自体の楽しさ」に特化したようなモデルです。
さらに、空冷Vツインエンジンが生む独特の鼓動感も魅力です。水冷エンジンが主流となった現代において、空冷Vツインの生々しいフィーリングは希少な存在となりました。エンジンの回転数を上げるごとにスムーズになる振動、手元や足元に伝わる微細な揺れが、まるで生き物のようにライダーに語りかけてくるかのようです。
スズキの「SV650」や「V-Strom1050」など、日本国内でもVツインエンジンのバイクは存在しますが、V7のような“縦置き空冷”という組み合わせはモトグッツィにしかありません。270度クランクの並列ツインも、Vツインに似たフィーリングを目指した設計ではありますが、やはり本物のVツインとは一線を画します。
まさに「唯一無二」という言葉がふさわしいバイク──それがMOTO GUZZI V7です。もし壊れてしまっても、「飾っておきたい」「オブジェとしてでも手元に置いておきたい」と思わせるほどの情感を備えており、その存在自体が愛される価値を持っています。
V7は、所有することで得られる“操る楽しさ”と“共にある幸せ”を同時に満たしてくれるバイク。一度手に入れると、もう手放せない。そんな中毒性の高い、魅惑の1台です。
YAMAHA セロー
バイクの魅力を言葉で語るのは時に難しいものです。なかでも、ヤマハの名車「セロー」はその最たる存在かもしれません。なぜ楽しいのか、なぜ手放せないのか──明確に説明できないのに、多くのライダーが口をそろえて「セローは最高」と語ります。これはもはや“理屈を超えたバイク”なのです。
「セロー」は1985年に初代モデルが登場したロングセラートレールバイク。オフロードとオンロードの中間的な性格を持ち、初心者からベテランまで、幅広い層に愛されてきました。モデル名の由来でもある“山岳を駆けるカモシカ”のように、軽快でしなやか、しかもどこにでも入り込める機動力が特徴です。
ただ、このバイクの真の魅力は、単に“軽くて走りやすい”といったスペックでは語れません。ライダーとバイクが“完全に一体化したような感覚”があり、操作に対する反応が極めて自然なのです。まるで手足の延長のように動かすことができ、街中でも山道でも、どんなシーンでも「操る喜び」を実感できます。
一部では「自転車のようだ」と形容されることもありますが、それ以上に「体の一部になったような一体感」が感じられるのがセローのすごいところです。この奇跡的なまでのバランスは、軽量な車体構成、絶妙なサスペンション設定、トルク特性、ハンドル位置、足つき性の高さなど、すべてが高次元で噛み合って生まれているものです。
もともとは「気軽にオフロードを楽しめるマウンテントレール」というコンセプトで開発されたモデルですが、蓋を開けてみれば、オンロードでも通勤でもツーリングでも、用途を問わず“楽しい”と感じられる不思議な存在に仕上がっていました。この“よくわからないけど楽しい”という感覚は、セローにしか出せない特別なものです。
製造終了後も根強い人気を誇り、中古市場では高値がつくことも珍しくありません。それほどまでに、多くのライダーが「セローを手放せない」と感じているのです。故障も少なく、メンテナンス性も良好。壊れにくいからこそ、永く付き合える。結果的に、手放す理由が見つからない──それがセローです。
数あるオフロードバイクの中でも、“理屈抜きに楽しい”という評価が与えられるモデルはそう多くありません。セローは、バイク本来の楽しさを純粋に感じさせてくれる、奇跡的な1台なのです。
YAMAHA SR400
ヤマハ「SR400」は、1978年の登場以来、40年以上にわたって愛され続けてきた名車です。その魅力は、単なるクラシックスタイルやレトロ感に留まらず、“バイクとの精神的な絆”とでも言うべき、不思議な吸引力を持っている点にあります。
SR400は、その造形美に黄金比が多く用いられており、見れば見るほど自然に“美しい”と感じられるデザインが特徴です。ロングタンクとフラットなシート、細く均整のとれた車体ラインは、まるで芸術品のような佇まい。この美しさは、時代のトレンドに左右されず、普遍的な魅力として長く支持されてきました。
しかし、SRの魅力は“見た目”だけにとどまりません。空冷単気筒エンジンが生み出す鼓動感は、他のエンジン形式では味わえない味わい深さがあります。エンジンを始動させた瞬間に手足へ伝わる震え、アクセルを開けるたびにリズムを刻む独特の振動は、まさに“機械と心が同期するような感覚”です。
また、SR400は決して快適なバイクとは言えません。高速道路では振動が強く、直進安定性も現代の基準からすると劣ります。さらに、セルスターターが搭載されていないため、エンジン始動はすべてキック式。気温やコンディションによっては、何度もキックを繰り返さなければならないこともあります。それでも多くのライダーがSRを愛してやまないのは、“不便を愛する”という感覚に通じる深い情感があるからです。
SR400は、ただの乗り物ではありません。たとえるなら、“前世からの親友”のような存在です。うまく付き合えばずっとそばにいてくれるし、調子を崩しても許せてしまう。自分のペースで寄り添ってくれる、唯一無二の存在です。
「たとえバイクに乗れなくなっても、SRだけは手元に置いておきたい」、「もはやバイクというより魂の一部」、そんな言葉が自然と口をついて出るような、バイクとの精神的つながりを感じさせるのがSR400です。
その関係性は、時に“呪い”にも似ています。もう乗らなくなったとしても、手放すという選択肢がなぜか浮かばない。たとえガレージの片隅で眠っていても、視界に入るたびに“心が通う”ような錯覚がある。それがSRの魔力であり、中毒性でもあります。
SR400は、スペックや合理性では語れない“感情に訴えかけるバイク”。不便さすら愛おしく感じられるその存在は、まさに「手放せないバイク」の代名詞と言っても過言ではありません。
YAMAHA Ténéré700
ヤマハ「Ténéré700(テネレ700)」は、ビッグオフロードというカテゴリーに属しながら、オンロードも含めた“あらゆるシーンに適応できる万能性”を持つバイクです。見た目はタフで無骨、しかしその中には計算され尽くした操作性と高次元のバランスが詰め込まれており、ライダーの期待を大きく超える体験をもたらしてくれます。
搭載されているのは、ヤマハが誇る並列2気筒・689ccの水冷エンジン。これは「MT-07」や「XSR700」といったバイクにも採用されている、軽量コンパクトかつトルクフルな“名機”です。そのエンジンを、あえてオフロード前提で設計された専用フレームに組み合わせたのが、このTénéré700。近年流行の“アドベンチャーバイク”とは一線を画す、まさに「本物のオフロードツアラー」です。
乗ってみるとまず驚かされるのが、“大きさを感じさせない軽快さ”です。大径フロントタイヤの効果で、旋回時の安定感が高く、オフロードでもワインディングでも、実にスムーズに体がバイクと一体化していきます。「MT-07がバランスのいい兄貴分なら、Ténéré700はそのすべてを鍛え上げた山岳戦士」とでも言えるかもしれません。
そのフィーリングは、かつての名車「セロー」にも通じるものがあります。セローが“手足のような軽快感”を持っていたのに対し、Ténéré700は“重量とサイズをものともしない自在さ”を手に入れた感覚です。自転車のような感覚こそ薄れましたが、高速道路での快適性や長距離ツーリングでの疲労感の少なさは、セローを大きく上回ります。
また、パワーデリバリーも非常に滑らかで、低回転域でも粘り強いトルクを発揮。オフロードだけでなく、都市部や高速巡航にも柔軟に対応する力強さを持ち合わせています。そのうえで、構造的にはシンプルで余計な電子制御も最小限に抑えられており、バイク本来の“操る楽しさ”がダイレクトに伝わってくるのも魅力です。
もちろん、シート高は高めで人を選ぶ面もあります。足つきに不安のある方にはやや敷居が高いかもしれません。しかしそれを補って余りあるのが、このバイクの圧倒的な“万能感”です。
「街中から林道、高速道路まで、どこへでも連れて行ってくれる」、「軽快で、パワフルで、カッコいい。そしてなぜか疲れない」、そんな声が多くのユーザーから寄せられるTénéré700は、まさに“長く付き合える本命バイク”です。
ビッグバイクに乗り換えたいけれど、重すぎるのは嫌。オフロードを楽しみたいけれど、セローでは物足りない──。そんなジレンマを抱えるライダーにとって、Ténéré700は理想に限りなく近い1台となるでしょう。
HONDA CB1300
「重くて、デカくて、古い」──それが今の時代におけるHONDA「CB1300」の第一印象かもしれません。しかし、その見た目や重量に惑わされてはいけません。CB1300は“古さ”を武器に昇華し、現代においても輝きを放つ、孤高の重量級ネイキッドバイクです。
かつてはビッグネイキッドの代表格として一世を風靡したCB1300シリーズ。現行では「スーパーボルドール(CB1300SB)」を含めたバリエーションが展開されており、一部ユーザーの間では“3台所有”している猛者もいるほどの支持を受けています。
最大の特徴は、その圧倒的な重厚感。装備重量はおよそ270kgにもなり、1000ccクラスの最新モデルが200kg前後であることを考えると、その差は明らかです。数値上の“重さ”は確かに存在しますが、実際に乗ってみると「驚くほど乗りやすい」という声が少なくありません。
理由は、スムーズでトルクフルなエンジン特性と、安定感抜群の車体バランスにあります。大型四気筒エンジンは低回転から十分なトルクを発揮し、エンジン回転数1000rpm程度でもスルスルと発進・巡航が可能。重いはずの車体がまるで“絹のように”動き出す感覚は、まさにHONDAらしい緻密な味付けの賜物です。
街乗りやツーリングにおいては、穏やかで落ち着いた走行ができる一方、アクセルをひねれば分厚いトルクと直列四気筒らしい伸びやかな加速でライダーを魅了します。それはまさに“ジェントルでパワフルな紳士”といった趣です。
近年では、トラクションコントロールや電子スロットルといった最新の電子制御も順次追加され、古典的な車体に最新テクノロジーを搭載することで“サイボーグ化”が進んでいます。見た目は旧世代、機能は現代──まるで「サイボーグおじいちゃん」とも呼びたくなるような存在です。
もちろん、弱点もあります。取り回しは重く、シート下の幅が広いために足つき性はあまり良好とは言えません。長距離での取り回しや、細かい駐車操作にはコツが必要です。また、価格帯は200万円前後と、同クラスの最新バイクと比較すると、スペック面でやや見劣りする場面もあるかもしれません。
しかし、それでもCB1300を愛して手元に置いておきたくなる理由は明白です。それは“安心感”“快適さ”“信頼性”、そして“時代を超えてもなお魅力的であること”。筋トレを兼ねた運転、と冗談めかして語られることもありますが、まさに“付き合えば付き合うほど味が出る”人生のパートナーとも言える存在です。
「いつかはCB」と語られることも多いCB1300。それは、最新の電子装備や軽量化が進んでもなお、このバイクが持つ“乗る者に寄り添う包容力”が揺るがないからに他なりません。
今後、こうした重量級かつ大排気量のネイキッドが新たに登場する可能性は極めて低いと考えられます。その意味でも、CB1300は“いま手に入れなければ後悔するかもしれない”稀少な存在となっているのです。
KAWASAKI Z e-1
増車が進む中、すべてのバイクを無条件で所有し続けられるわけではありません。スペースや維持費、そしてライフスタイルの変化など、さまざまな事情により「手放すかもしれないバイク」も出てきます。
ここで取り上げるのは、筆者が所持しているカワサキの電動バイク「Z e-1」。環境配慮型のモビリティとして注目される一方で、現実的な使い勝手やコストパフォーマンスの面から、継続所有に悩む声も少なくありません。
Z e-1は、都市部での移動や短距離通勤など、限られた用途では非常に快適な乗り味を提供してくれます。加速感は軽快で、「静かに、スッと前へ出る」感覚はガソリン車にはない独自の魅力です。しかし、最大のネックは航続距離。満充電でおよそ50kmという短さでは、ツーリングや中距離移動には不安が残ります。
さらに、バッテリーの価格と寿命も課題です。本体価格がおよそ30万円程度であるのに対し、予備バッテリーは70万円近くにもなり、交換や複数保有を現実的に考えると非常に高コスト。しかもリチウムイオンバッテリーは使用と共に劣化が進み、数年で性能が著しく低下する可能性があります。
「劣化すれば、ただの高価な重りになってしまう」──そんなリスクを孕んでいるのも事実です。
加えて、多くの電動バイクには国や自治体からの補助金制度が適用されますが、これには「一定期間(通常は3年)以内の転売・廃棄は禁止」という縛りがあるケースがほとんどです。Z e-1も例外ではなく、購入から3年以内に手放すと補助金の返還義務が生じます。
たとえば「去年の4月に購入した」となれば、あと1年半以上は所有し続ける必要があります。こうした制度的な制約もあり、「思ったより使いづらいけど、今はまだ手放せない」というジレンマに陥っているライダーも多いのではないでしょうか。
補助金を活用すること自体は悪いことではありません。むしろ、環境にやさしいモビリティの普及においては欠かせない支援策です。しかし、“補助金頼み”で購入したバイクが、後に自分のライフスタイルとマッチしなくなることもある。だからこそ、「補助金を含めた長期的な視点」でバイクを選ぶことが重要です。
増車地獄にハマって抜け出せなくなるのも、ある意味では“幸せな呪い”。とはいえ、バイクの世界では“選ばなかった後悔”より“手放してしまった後悔”の方が深く心に残るものです。
今回紹介したバイクたちは、いずれも「手放す理由が見つからない」──いや、「むしろ絶対に手放したくない」と思わせる魅力を持つモデルばかりでした。性能や価格、維持費などの“理屈”では説明しきれない“愛着”が、増車を後押しし、ときにはライダーを呪縛のように縛り付けます。
CB400SFの豹変するVTEC、V7の唯一無二の旋回感覚、セローの言語化不能な楽しさ、SR400の魂のような存在感、Ténéré700の万能性、そしてCB1300の重厚な安心感。どれも一度乗ってしまえば、心のどこかに強烈な印象を残し、気づけば「増やすけど減らせない」状態になってしまう。それが“増車危険度が高いバイク”たちの正体です。