増車沼に落ちない、ゼロからの1台目

1台目に最適なバイク解説。

引っ越しの都合で一度バイクを手放したものの、再びバイクの購入を検討しているという方も多いのではないでしょうか。とくに現在バイクを1台も所有していない状態から、「最初の1台」を選ぶ場合、その選び方はなかなか難しいものです。

本記事では、手持ち0台から1台目としておすすめしやすいバイクについて、それぞれの特長や選びやすさ、初心者への適性をふまえながら紹介していきます。

購入後に「やっぱり合わなかった」と後悔しないよう、各モデルの利点・注意点を丁寧に見ていきましょう。

1. KAWASAKI W230

KAWASAKI W230

KAWASAKI W230

最初の1台としておすすめしたいバイクの一つが、カワサキの「W230」です。このモデルは比較的最近登場した車種で、特徴はなんといってもその軽さと扱いやすさにあります。

車両重量は143kgと非常に軽量で、バイクに乗る際の心理的ハードルが低く、日常的に気軽に乗れる点が大きな魅力です。また、軽くてコンパクトな車体は、自宅での出し入れや外出先での取り回しにも優れており、初心者でも扱いやすい設計となっています。

一方で、小柄な車体ゆえに積載性能にはやや制限があります。しかし、近年は社外パーツも充実してきており、エンデュランス社からは耐荷重8kgのリアキャリアが発売されています。また、サイドバッグサポートなども登場しており、カスタマイズ次第では積載性を向上させることも可能です。

純正キャリアは価格が高めで耐荷重も3kgと実用性にやや欠ける面がありましたが、社外品の普及により利便性は大きく向上しています。

注意点としては、シート高が745mmとかなり低めに設定されているため、身長が170cm以上の方にとっては足の曲がりが窮屈に感じられる可能性があります。

また、価格について「もう少し安ければ」と感じる方もいるかもしれません。同系統のモデルである「MEGURO S1」は中身がほぼ同じでありながら、70万円台とさらに高額であるため、W230は相対的に手が届きやすいモデルとも言えます。

すべての点で完璧とは言い切れませんが、バイクの軽さと独特な雰囲気を重視する方には非常に魅力的な選択肢です。

2. HONDA CRF250RALLY

HONDA CRF250RALLY

HONDA CRF250RALLY

ホンダの「CRF250RALLY」は、オフロードバイクとしての特性を持ちながらも、アドベンチャーバイク的な側面を備えたモデルです。CRF250Lと共通のエンジンを搭載しつつ、RALLYは大容量タンクと広めのシートにより、長距離移動や日常利用にも適した仕様となっています。

タンク容量が増加したことで航続距離が向上し、通勤やツーリングでも安心感があります。また、シート形状が広く快適性が増しており、街乗りから林道走行まで幅広くカバー可能です。

車重は153kgとオフロード系としては比較的軽量で、取り回しにも優れています。シート高は高めに設定されていますが、車体自体がスリムで、かつサスペンションの沈み込み量が大きいため、地面への足つきは意外と良好です。

同系エンジンを搭載する「レブル250」と比較されることもありますが、レブルはクルーザースタイルで重さがあり、旋回時の感覚も独特です。そのため、幅広い用途に対応したい場合は、CRF250RALLYの方が汎用性に優れているといえるでしょう。

なお、レブルにはイージークラッチ(Eクラッチ)仕様もありますが、初心者が最初の1台としてこの機能に頼ると、後々マニュアル車への移行が難しくなる可能性があるため注意が必要です。

3. SUZUKI GSX250R

SUZUKI GSX250R

SUZUKI GSX250R

スズキの「GSX250R」は、フルカウルを備えたスポーツツアラーでありながら、扱いやすさを重視した設計が特徴です。型落ちの新車であれば実売価格が40万円台からと比較的手が届きやすく、初めてのバイクとして選びやすいモデルの一つです。

250ccクラスとしてはやや車重があるものの、高速走行時の安定性が高く、総合的に苦手なシーンが少ない点が魅力です。ただし、100km/h前後の速度域ではハンドルの振動が強くなる傾向があり、長距離ツーリング時には注意が必要です。

同じエンジンを搭載した「V-Strom250」も選択肢として挙げられます。V-Stromはさらに重く車体も大きめですが、快適性や積載性を求める方には適しています。このクラスでツアラー志向が強い場合は、V-Stromの方が満足度が高いでしょう。

4. SUZUKI ジクサー

SUZUKI ジクサー150

SUZUKI ジクサー150

スズキの「ジクサー」シリーズは、コストパフォーマンスに優れたモデルとして知られています。150ccモデルは実売価格30万円程度から購入可能で、初めての1台として「とりあえず乗ってみる」には最適な選択肢です。

250ccモデルにはネイキッドの「ジクサー250」とフルカウル仕様の「ジクサー250SF」があり、いずれも価格帯が比較的リーズナブルです。軽量な車体と穏やかなエンジン特性により、初心者でも扱いやすい構成となっています。

走行性能を極めたいというよりも、維持費や取り回しのしやすさ、価格面での安心感を重視する方におすすめです。

5. YAMAHA MT-03 / YZF-R3

YAMAHA MT-03

YAMAHA MT-03

ヤマハからは「MT-03」や「YZF-R3」が挙げられます。どちらも320ccエンジンを搭載し、扱いやすさと軽快さを兼ね備えたモデルです。

「MT-03」はネイキッドスタイルで、前傾姿勢が少なく自然な乗車姿勢が特徴です。そのため街乗りやツーリングにも適しており、初めてのバイクとして選ばれることが多いモデルです。

「YZF-R3」はフルカウルスポーツタイプで、スタイリッシュなデザインと走行安定性が魅力です。ただし、250ccクラスのフルカウルバイクに比べると前傾姿勢がやや強く、人によっては疲労を感じやすいかもしれません。

250ccにこだわらないのであれば、排気量・トルク・安定性のバランスが取れたMT-03の方が長期的な満足度は高い可能性があります。

6. HONDA GB350

HONDA GB350

HONDA GB350

ホンダの「GB350」は、クラシックな外観としっかりとした走行性能を併せ持つスタンダードバイクです。とくにスタンダードモデルは価格も比較的リーズナブルで、コストパフォーマンスの高さが魅力といえるでしょう。

見た目の方向性が似ているカワサキW230と比較すると、GB350はより重厚感があり、走行時の質感が高いと感じる方も多いようです。また、身長が高めの方にはシート高やポジション面でGB350の方が自然な乗車姿勢をとりやすく、フィットしやすい点もポイントです。

ラインナップはスタンダード、S、Cの3種類が用意されており、好みに応じて選ぶことができます。ただし、排気音には個性があり、低回転時の独特なサウンドが苦手と感じる方もいるため、購入前には試乗をおすすめします。

GB350はサイズ感もあり、気軽に“とっておく”というよりは明確な所有目的が必要なモデルです。その分、用途が明確な人にとっては長く付き合える1台となるでしょう。

7. KAWASAKI Ninja400 / Z400

KAWASAKI Z400

KAWASAKI Z400

400ccクラスで軽快さと実用性を両立しているのが、「Ninja400」と「Z400」です。いずれも車重が軽く、取り回しがしやすいため、中型バイクの中でも特に扱いやすいモデルといえます。

かつては100km/h前後でのハンドル振動が強いという指摘もありましたが、年式や個体差による部分が大きく、一概には判断できません。振動に敏感な方は試乗して確認するのが確実です。

「エリミネーター」はこの2台と基本構成が共通で、クルーザースタイルに変更されたバリエーションモデルです。エリミネーターではハンドルの振動対策が施されているという報告もあり、高速走行時でも快適性が向上しているようです。

これらのモデルは総じて高速道路を多用する方にとっても安心感があり、初心者でも安心して扱える選択肢といえるでしょう。

8. HONDA CBR400R / NX400

HONDA CBR400R

HONDA CBR400R

ホンダの「CBR400R」と「NX400」は、いずれも高い汎用性を持つモデルです。車重はやや重めではあるものの、その分だけ高速安定性が高く、街乗りからツーリングまで幅広く対応します。

操作性にクセがなく、全体的にバランスが取れているため、特定の用途に特化していない分、初心者にも扱いやすいのが特徴です。

一見すると突出したアピールポイントが少なく、マーケティング的に“地味”な印象を受けるかもしれませんが、長期的な所有や複数バイクを経た後に“戻ってくる”ような魅力を持っています。安定した走りと安心感を求める方におすすめです。

9. KAWASAKI ZX-4R

KAWASAKI ZX-4R

KAWASAKI ZX-4R

「ZX-4R」は、高回転型4気筒エンジンを搭載したスポーツバイクでありながら、意外と扱いやすいモデルとして注目されています。初心者に積極的に勧められるモデルではないものの、さまざまな事情で現在手元にバイクがない人にとっては、非常に有力な選択肢となるかもしれません。

兄弟モデルである「ZX-25R」はピーキーな性格があり、乗りこなすにはある程度の経験を要しますが、ZX-4Rはトルクや安定性が高く、汎用性に優れています。見た目はレーシーで乗車姿勢もやや前傾ですが、他の本格的なスーパースポーツに比べれば快適性は高めで、体格に合えば長時間のライディングもこなせます。

4気筒エンジンの独特なフィーリングが好みの方にとっては、パワーと実用性をバランスよく備えた1台として魅力的です。

なお、ホンダからは「CB650R」なども同じ4気筒でより高性能なモデルとして存在しますが、価格や軽さの面からZX-4Rの方が万人向けといえるかもしれません。

12. SUZUKI SV650

SUZUKI SV650

SUZUKI SV650

大型バイクの中で「最初の1台」として検討するなら、スズキの「SV650」は非常に有力な選択肢です。650ccという排気量ながら、扱いやすいVツインエンジンとスリムな車体により、初心者でも比較的安心して乗ることができます。

多くの教習所で使われているCB400SFよりも操作感が軽く、乗りやすいと感じる人も少なくありません。また、価格設定も抑えめで、大型バイクの中では手が届きやすいモデルです。

迷ったらとりあえず「SVにしておけば間違いない」と言われることも多く、万人向けの良バランスを持つモデルといえるでしょう。

11. YAMAHA MT-07

YAMAHA MT-07

YAMAHA MT-07

「MT-07」はヤマハの“マスター・オブ・トルク”というコンセプトを体現したモデルで、低回転から力強い加速を味わえるのが特徴です。そのため、アクセル操作に慣れていない初心者にはやや扱いづらく感じる場面があるかもしれません。

しかし、2025年モデルからは電子制御スロットルを採用し、パワーモード切替やトラクションコントロールが搭載されるなど、制御性能が向上しました。これにより、やさしい設定で運転をスタートできるため、以前よりも初心者にも扱いやすくなっています。

価格はアップデートの影響で上昇傾向にありますが、オールマイティに使える汎用性の高さから、長く付き合える1台です。

12. HONDA NC750X

HONDA NC750X

HONDA NC750X

ホンダの「NC750X」は、大型二輪教習車の兄弟モデルともいえる存在で、落ち着いた挙動と高い実用性を兼ね備えています。特に特徴的なのが、タンク部分に収納スペースを備えており、フルフェイスヘルメットが収まるほどのラゲッジスペースがある点です。

また、DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)仕様も用意されており、クラッチ操作なしで変速が可能となっています。ただし、初めての1台としてDCTモデルを選ぶと、通常のマニュアル操作への移行が難しくなる可能性があるため、注意が必要です。

DCTの利便性は非常に高く、一度乗ってしまうと他の車両に戻れなくなるほどと評されることもあります。車体は重めですが、挙動は非常に穏やかで、重さを気にしないのであれば初めての1台としても選択肢に入るでしょう。

13. SUZUKI GSX-8S / 8R

SUZUKI GSX-8S

SUZUKI GSX-8S

「GSX-8S」および「GSX-8R」は、スズキが近年投入したミドルクラスのニューモデルで、非常に乗りやすいと評判です。トルクフルなエンジンと素直なハンドリングにより、スポーティながらも安心して運転できる点が特徴です。

ただし、長期間バイクに乗っていなかった方や完全な初心者には、パワー感や車体特性に慣れるまでに少し時間がかかるかもしれません。最初はパワーモードを「C(やさしい)」に固定して乗ることで、安全にバイクの感覚を取り戻すことが可能です。

過度な重量感もなく、楽しいバイクライフをスタートさせたい方には適した1台です。

14. HONDA CB1300

HONDA CB1300

HONDA CB1300

「CB1300」は、その大柄な名前とは裏腹に、実際には非常にマイルドで扱いやすい特性を持った大型バイクです。一般的なミドルクラスのモデルよりもむしろ乗りやすいと感じる方もおり、排気量の数字ほど“ビッグ”ではありません。

ただし、車重は相応にあるため、取り回しや停車時には注意が必要です。傾斜のある場所での駐車では、重量ゆえに体勢を崩すリスクもあるため、慎重な操作が求められます。

初心者が選ぶモデルとしては積極的にはおすすめしにくい部分もありますが、マイルドな性格を活かして運転できるのであれば、「1台で何でもこなしたい」という方にも応える懐の深さがあります。

一方で、初心者や久しぶりにバイクに乗る方が避けた方が良いバイクも存在します。まず第一に、自身の体格に合っていないバイクです。

たとえば、シートが高すぎて足が地面に届かない、あるいは逆に小さすぎて膝が窮屈になるようなバイクは、操作に支障をきたすだけでなく、安全面でも不安が残ります。

また、過剰に重い車体やパワーのあるエンジンも、初期段階では扱いが難しく、焦って操作ミスを招く可能性があるため注意が必要です。

DCTやY-AMTといったクラッチレスの電子制御モデルは、便利ではありますが、これに慣れてしまうと通常のマニュアル操作に戻れなくなることもあります。とくに長期的にバイクライフを楽しみたい方には、まず基本操作を身につけてから選ぶことをおすすめします。

Eクラッチを搭載したモデルであれば、OFF設定にすることで通常のクラッチ操作に近い環境で慣れることもできます。自分の体格や志向に合った1台を丁寧に選ぶことが、失敗しないバイク選びの第一歩です。