全盛期の1割? バイクのリアルな販売台数を調べてびっくり

バイク販売台数の推移とその背景。

かつてバイクはもっと売れていたという話を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。本記事では、実際の統計データをもとに、ここ数十年のバイク販売台数の推移と、その背景にある社会的・法的な要因を解説します。さらに、直近の人気車種やメーカーの動向、そしてなぜ50ccバイクだけが急激に減少したのか、その理由を読み解いていきます。

1. 直近の販売台数とその傾向

2024年のバイク販売台数は、前年の37万7,000台から約15%減少し、32万台となりました。

2023年と2024年のバイク販売台数グラフ

2023年と2024年のバイク販売台数グラフ

一見すると大幅な落ち込みのようにも思えますが、2020年頃と同水準であり、特別に少ないわけではありません。むしろ2022〜2023年が一時的に多かったことを考えると、通常の水準に戻ったと見ることもできます。

排気量別販売台数グラフ(2023-2024)

排気量別販売台数グラフ(2023-2024)

排気量別に見ると、50ccクラスは前年比18%増の11万台と伸びました。これは、廃止が予定されていることによる駆け込み需要と考えられます。一方で、それ以外のクラスは軒並み減少しています。125ccクラスは24%減の11万3,000台。250ccクラスは35%減の4万4,000台。それ以上のクラスも21%減の5万4,000台となりました。

2. 人気車種とメーカーの動向

小排気量クラスでは、ホンダのPCXシリーズが依然として高い人気を保っています。125cc、160ccともに好調で、ファミリー車種であるADVを含めると約1万500台を記録しています。ハンターカブも引き続き人気で、8,000台を販売し、125ccカテゴリーでは第4位にランクインしました。

250ccクラスではホンダ・レブル250が9,000台と依然としてトップ。PCX160が6,000台で続きます。ホンダGB350は2022年に1万2,000台と華々しいデビューを飾りましたが、2024年は4,500台まで減少しました。ただし、派生モデルのGB350Cの登場により、今後も一定の台数は維持する見込みです。

250cc以上のバイク販売台数グラフ(2024)

250cc以上のバイク販売台数グラフ(2024)

カワサキのエリミネーターは、初年度の4,000台に対して、2024年には6,000台と大きく伸び、Z900RSを上回りました。ZX-4Rも3,500台を記録し、カワサキ勢の勢いが感じられます。250cc以上のクラスでは、カワサキが大きなシェアを占めており、ホンダはGBシリーズを除くとやや控えめです。

一方、スズキやヤマハはやや影が薄く、スズキはV-Strom250SXとジクサー250系で合計4,500台。GSX-8SおよびGSX-8Rは合わせて2,000台弱です。ヤマハはXMAXが約2,000台、MT-25やYZF-R25も1,500台ほどにとどまっています。

3. 本当に昔はもっと売れていたのか?

バイク販売台数推移(1980-2024)

バイク販売台数推移(1980-2024)

現在の年間販売台数は30〜40万台で推移していますが、1982年には実に300万台以上が販売された年もありました。その差はおよそ10倍。グラフで確認すると1980年代の販売台数の高さが際立ちます。この推移だけを見ると、バイク業界は急激に衰退しているようにも見えるかもしれません。

4.販売台数の真実

50ccを除いたバイク販売台数推移(1980-2024)

50ccを除いたバイク販売台数推移(1980-2024)

しかし、視点を変えて50ccを除いた販売台数の推移を見てみると、1980年代から現在に至るまでほとんど横ばいであることがわかります。つまり、販売台数全体が減ったというより、50ccバイクの販売が極端に減ったことが、全体の減少に見える最大の要因なのです。125cc以上の実用的・趣味的なバイクは、多少の減少はあるものの、概ね安定して販売が続いています。

5. なぜ50ccバイクだけが衰退したのか?

50ccバイクの販売減少には、複数の要因が絡んでいます。

(1)法規制の厳格化

最高速度30km/h制限や2段階右折といった不便な交通ルールにより、実用性が著しく制限されました。

(2)都市環境の変化

自転車レーンの整備や電動アシスト自転車の普及により、バイクより自転車のほうが便利という状況が広がりました。

(3)若者のバイク離れ

より趣味性や快適性の高い125cc以上へと移行する傾向が強まっています。

(4)電動モビリティの普及

電動キックボードや電動アシスト自転車といった新しい移動手段が選ばれるようになりました。

(5)メーカー側の戦略変更

排ガス規制への対応が難しく、50ccの新規開発や生産を終了するメーカーが増加しました。警察による取り締まりも影響の一因です。30km/h制限や2段階右折は、違反しやすく摘発しやすいため、「原付=取り締まりの対象」というイメージが定着しています。結果として「手軽に乗れて経済的」とされていた50ccバイクが、むしろリスクの高い乗り物として敬遠されるようになりました。

6. まとめ

現在のバイク販売台数が全盛期の1/10になったという話は、厳密には「50ccバイクの販売数」が激減したことによるものです。125cc以上のバイク市場は、おおむね安定した水準で推移しており、大きな衰退は見られません。ただし今後は、高齢化や人口減少といった社会的背景により、ゆるやかに台数が減っていく可能性もあります。