生きた化石、モトグッツィV7がヤバい。

いろいろあって2台目のモトグッツィV7を、買って取り替えた筆者が、V7のスゴさについて。

所有中、元所有バイクの、スズキSV650、GSX-8R、カワサキZ900RS、などと比較しながら、紹介していきます。

1.V7とは

モトグッツィV7とは、横に張りだしたエンジンが特徴の、一目見ただけで唯一無二であることを、感じとれるバイクです。

MOTO GUZZI V7 Stone

MOTO GUZZI V7 Stone

この張り出した形は、縦置き90度空冷Vツインエンジンという、絶滅危惧種で、モトグッツィしか作っていません。

これが普通に公道を走れるというだけで、世界遺産に認定した方が良いかもしれない。

Vツインの魅力に取り憑かれると、最後はここに行き着いてしまう、まさにヘンタイな魂たちの最終処分場が、モトグッツィというメーカーのバイクたちです。

エンジンが縦置きのためチェーンは使わず、シャフトドライブになっていることも、特徴の一つです、チェーンがないから静かかと思いきや、別のメカ音があるものの、進行方向を向いたシャフトが、直進安定性につながると言われています。

V7はこういった独得のパッケージングですが、今後新しく出てくることはないので、モトグッツィがやめたら絶滅確定。

現行モデルは、クラシカルなスタイルのSpecial、モダンなStoneが中心のモデルです。

Specialはメッキ仕上げ箇所多数、アナログ2眼メーターを最近まで、継続していました。

Stoneはマットな仕上げが多く、Special Edition、TEN、Corsaなどの、特別仕様車も展開しています。

2025年モデルは電子制御スロットルに、アップデートし、新たに走行性能を上げたSportも追加、Specialもデジタル単眼メーターになって、Stoneとの差があまりなくなり、クラシカルなスタイルは2024年までのモデルで、終焉を迎えた感があります。

モトグッチはV7以外も縦置きVツインの、車種展開ですが、1921年設立以来100年続く、イタリア最古のバイクメーカーです。

V7は2021年にエンジンがV9と統合され、744ccから853ccになっています、そういう歴史によりV7という名前でありながら、853ccで「あれ?」と名前になっていますが、そのへんイタリアなので気にしないでください。

2.走行フィーリング

V7の走行フィーリングとして、特徴的なものを紹介します。

(1)旋回感覚が異次元

旋回時の車体バンクがやたら素直で、車体のサイズ感や重さから想像するより、軽々動かせます、これはエンジンの縦置きレイアウトによるものとのことで、筆者はこの旋回感覚がたまらなく好きで、ついV7を買ってしまいました。

スパッとバンクして、すーっと曲がっていく気持ちよさは、初見で「おっ?」となる人が多いでしょう。

(2)Vツインの鼓動感がいい

なかなかにメカメカしく、勇ましい音で目覚めるエンジン。

低回転はまずまず鼓動感があって魅力的です、ゆっくり走るのが心地よく、のんびり走行もストレスを感じません。

エンジンを回していくと、まるで振動が減っていくかのような感覚は、Vツインならでは、爽快感のある走りができて、低回転と高回転で二面性を楽しめるのも魅力です。

(3)エンジン回転上下のマイルドさ

クラッチを切った時などのエンジン回転変動が、ゆっくりめで急かされず、シビアな操作をしなくて良いので、いつも気楽に乗れます。

ヤマハSR400なども同じような感覚ですが、こういった特性のおかげで、下道のんびり走行が快適です。

(4)縦置きエンジンと乾式クラッチ

エンジンが縦置きということもあり、エンジン始動時と停止時に横に揺れる特徴があるので、慣れないと戸惑うかもしれません、サイドスタンドをかけた状態で、エンジン始動と停止をすると安心です。

縦置きVツインエンジン

縦置きVツインエンジン

アクセルONでも横に力がかかりますが、走行中は気にならない程度です、シフトダウンでブリッピングするとき、回しすぎると横の力を感じます。

クラッチが一般的なバイクの湿式多板と違い、乾式単板クラッチで、四輪のマニュアル車と同じような構造です、といっても、操作の仕方も体感も普通です。

ギアが新車時ニュートラルに入りづらいとか、いろいろありますが、そのうち整うとみなさん言っています。

3.スペック

エンジンスペックはこの通りです、目を見張るスペックでは全くありませんが、低めの回転からトルクがあるので、十分な速さがあって走りやすいです。

853cc、48 kW (65 HP) / 6,800 rpm、73Nm/5,000rpm。

車重はV7スペシャルが223kg、ストーンが218kgで、軽量級ではないものの、超重量級というほどでもありません、以前の普通二輪教習車CB400SFと、おなじくらいの取り回し体感です。

回転半径はスペックに記載がなく数値での比較はできませんが、こちらもCB400SFの2.6mと近い水準に感じます。

シート高は780mmと現代のバイクでは低めで、地面は近めですが、シートとペダルの垂直距離は502mm程度、ペダルがやや前に出ているので、着座位置との実距離は519mmあり、脚の窮屈さを感じにくくなっています、実距離の65%、股下87cm以下ならおそらく窮屈感はありません、実距離の60%、股下80cm以下ならさらに余裕に感じると思います、着座位置の自由度もあるので、高身長でも何とかなるでしょう。

燃費と航続距離ですが、タンク容量21L、燃費はスペック値にはありません、実際にはおよそリッター20以上は走り、環境などによって25〜30くらいでも不思議ではないくらいで、20で計算しても420km、25で計算すると525kmと、航続距離お化けチームに入れそうです。

ただしその分結構減ってから給油すると、ハイオク20L近く入れることになって、心が削られたりします。

概ねこのクラスでは燃費は良い方なので、お財布にやさしいのがありがたいです。

4.高速道路走行

高速道路は概ね快適です。

90度Vツインエンジンの特性で、回転を上げても不快な振動が増えにくく、体感的には振動が減るような感覚になるのが、V7の特徴の一つです。

四輪車の列をすいすい駆け抜けるだけの、十分な機敏さもあります。

スクリーンがなくてもなぜかネイキッド一般より、風当たりがきびしくないと感じるのは、実は無意識にゆっくりめに走っていることによるのか、ただの気のせいかもしれません、ちなみに純正ウィンドスクリーンもラインナップされています。

スクリーンがなくても風当たりが厳しくない

スクリーンがなくても風当たりが厳しくない

直進安定性は高くない方で、ホンダCB1300の抜群の安定感には当然及ばず、スズキGSX-8Rの安定性にも劣ります、旋回性能に振ったヤマハXSR700くらいの体感で、路面ギャップなどの影響をやや受けやすいと感じますが、比べるとというレベルなので、普通あまり気にならないと思います。

ステップ配置の余裕さもあって、長時間走行も体の負荷は少なく、心地良いロングツーリングができるでしょう。

5.積載部品

ヨーロッパで普及しているバイクは、積載部品が充実しているものが多く、V7も荷物を積む方法がたくさんあります。

純正のリアラックはクロームと黒があり、メッキ仕上げのスペシャルと、マットなストーンの、それぞれに合う仕上げが用意されています、このへんはさすがイタリアですね、このラックはグラブバー部分が上に張り出していて、やや荷物を積みづらい感があるのが惜しく、トップケース部品もやや付けづらいという、少し残念なところはありますが、工夫すればどうにでもなります、41,800円とややお高めです。

純正のリアラック

純正のリアラック

純正サイドバックサポートブラケットは、汎用サイドバッグも付けられますが、クイックリリースサイドバッグが使えて便利です、ただしサポートが65,340円とやはりややお高め、サイドバッグが89,100円と、揃えると結構な金額になります。

社外品キャリアもいろいろあり、SW-MOTECHサイドキャリア、ヘプコアンドベッカーサイドキャリア、KlickFixキャリアなど、ケースやバッグをワンタッチ接続できるものが、豊富です。

SW-MOTECHはクラシカルなLEGEND-GEAR、スポーティーなURBAN ABSサイドケースが、つけられます、キャリアは片側15,000円くらいで買えるので、お手頃です。

ヘプコアンドベッカーはC-BOWが、5万円前後、バッグをつけていないとトゲトゲしているのが、好みが分かれそうですが、バッグ搭載位置を前後50mm上下30mm移設する、キットもあるので、マフラー干渉などがある大きさのケースには、便利です。

KlickFixキャリアは左右で1〜2万円くらい、こちらはバッグ側アタッチメント単体も買えるので、バイク用に限らず好きなバッグに、アタッチメントをつければ、どんなものでもワンタッチ接続できるため、使いやすいです、ちなみに はヤマハの純正オプションなどにも、使われたりしています。

https://www.amazon.co.jp/LONGRIDE-CLICK-ONサドルバッグ用ブラケット-モト・グッツィV7-Special-BR-1084/dp/B0BL78JVJ4?th=1

積載関連は日本では汎用バッグを気合いで、くくりつける製品が多いですが、車両にワンタッチ接続するものが、明らかに安定して便利なので、そういった製品が充実しているV7は、安定した積載がしやすいバイクとなっています。

6.他のバイクと比較

では近い排気量のバイクと比較していきます。

(1)SV650/SV650X

まずスズキSV650/SV650X、こちらは645ccと、V7より200ccほど排気量が小さいですが、V7と同じように90度Vツインを搭載した、貴重なバイクです。

SVのエンジンはもちろん横置きで、水冷エンジンのためV7より鼓動感の主張は少なく、より扱いやすいバランスです。

低回転の鼓動感はちょっとあるくらいで、V7はSVのVツイン感を増幅させたくらいの感じでしょうか、SVでVツインに魅せられたら、V7に突撃してしまうのは、それはきっと自然の摂理です。

V7 1台分でSVが2台くらい買えるので、普通の人にはSVをおすすめします。

(2)GSX-8S/8R

排気量が少し上がってスズキGSX-8S/8R、こちらは775ccなので、V7の排気量にそこそこ近いです、Vツインではなく直列270度クランクツインで、エンジンの主張が少なくスムーズなので、体感的な方向性はだいぶ違います。

V7と比べると性能は全ての面で上と言っても過言ではなく、静かな上全域で振動少なく、加速性能は段違い、サスペンションも高性能で、直進安定性が高く旋回性能も充実、仮にV7から乗り換えると、全てがレベルアップした感じを受けるでしょう。

ただし270度クランクでVツインに近いとはいえ、鼓動感とはほぼ無縁なので、そういう方向性や、縦置きエンジンの特性、見た目に惹かれる人は、V7が楽しめると思います。

(3)Z900RS

カワサキZ900RSはV7と同じ丸目ネイキッドです、こちらは948ccとV7より100ccくらい大きく、直列4気筒エンジンを積んでいます。

ストファイZ900より丸目のRSの方がキャラクター近く、V7の価格がだいぶ上がってしまったため、ほぼ同じ価格になりました。

性能はやはり全ての面でZ900RSが上なので、普通はこっちを選ぶでしょう。

しかし人とかぶるのが嫌、さらなるロマンを求める人は、ぜひV7に突撃してみてください。

(4)SCR950(BOLT)

生産終了したヤマハのクルーザーBOLTですが、筆者は派生モデルのSCR950を持っていて、こちらは941ccの空冷Vツインエンジンで、実はV7に近い存在です。

エンジンはもちろん横置きで、バンク角60度の空冷Vツイン、60度のため振動特性は違うものの、低回転の鼓動感と高回転で振動を感じにくくなるところは、よく似ています。

YAMAHA SCR950とV7は近い存在

YAMAHA SCR950とV7は近い存在

中古車もそれほど高くないので、お手軽に空冷Vツインを味わいたいなら、BOLTの中古を探すのが、コストがかからなくて良さそうです。

7.モトグッツィのバイク

(1)ラインナップ

モトグッツィは100年以上続くメーカーですが、ラインナップは少なく、現在時点ではV7の他に。

V85、V100、Stelvio。

3種類が展開されています。

V85はアドベンチャー系モデルで、V7と同じ空冷Vツインエンジンを積んでいます、国内で見ることはほとんどないので、絶対に人とかぶりたくない人には良さそうです。

MOTO GUZZI V85

MOTO GUZZI V85

V100は、1,042 cc水冷Vツインエンジンの、ロードスポーツモデルで、2024年モデルとして登場しました。

Stelvioも、同じ水冷エンジンで、こちらはアドベンチャーツアラーモデルとなっています。

現行の空冷V7たちがいつまで存続するかはわかりませんが、次の排ガス規制を空冷で通すのは難易度が高いと、言われています。

(2)どこで買えるか

モトグッツィのバイクは、ピアジオグループジャパンが取り扱っていて、正規ディーラーは、Vespa、Aprilia、MOTO GUZZI、をまとめて扱っています、Vespaの看板があれば、そこにMoto Guzziがあると思って、およそ正しいです。

正規ディーラーではありませんが、レッドバロンでも新車を買えるので、レッドバロンユーザーは、そこでも良さそうです。

整備レベルは話している感じでは、正規ディーラーの方が間違いないので、近くにあれば正規ディーラーに行った方が、安全とは思います。

モトグッツィのバイクはとても魅力的なので、気になる人はぜひ見に行って、V7ワールドへ迷い込んでみてください。

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