自腹でバイクを買ってレビューするシリーズ、今回W230を入手したので、早速乗り込んで走行フィーリングなどを紹介します。エストレヤ、SR400、ロイヤルエンフィールド、GB350、Rebel250など、比較されそうなバイクも参考例でお話しします。

１．下道走行フィーリング

（１）鼓動感

W230の鼓動感

エンジンの鼓動感ですが、早めのシフトアップをして低めの回転数を意識して走ると、意外にいい感じのレスポンスがあります。2,500回転から3,500回転くらいの間を使ってアクセルを強めに回すと、心地良い振動と音とともに加速できます。とはいえ250ccクラスなのであまり期待しすぎない方が良いです。

ロイヤルエンフィールドの350、ヤマハSR400などの方が鼓動感レベルは上なので、250ccクラスにしてはいい感じと思ってください。エンジンを4,000回転くらいまで回すと、KLX同様のカサカサ系で振動をあまり感じなくなってくるので、高めの回転数を使って走るとだいぶ個性が薄めの走りになります。

（２）加速感

低回転を使って走るのが合っているとはいえパワーはなく遅いです。加速したい時は積極的に上まで回していけばそれなりにキビキビ走れます。回してもSR400のように振動がひどいことにならず、まるで90度Vツインかのように体感の振動レベルが減るので、回してクイックに走ることもできるため使い勝手が悪くないバイクです。

（３）旋回感

旋回感は気持ち良くスパッと車体を倒して曲がっていけるので楽しいです。乗っているとシートの低いオフロード車のような、そんな感覚になるのはKLXファミリーだからでしょう。

（４）低速走行、渋滞

エンジンブレーキが強くなく、アクセルの挙動もクイックではないので、ガクガクしないため楽です。車体の軽さもありだいぶ気を抜いて走れるので、気軽に使える相棒として活躍してくれそうです。

２．ロングツーリング適性

（１）乗車姿勢

ロングツーリングには乗車姿勢の適正度合いがとても重要です。

W230の前傾率

前傾率を測定すると身長175cmで15.9%、160cmで23.5%です。普通二輪教習車に使われていたCB400SFより直立姿勢で、一定身長以上はおよそケツ痛まっしぐらでしょう。W230はケツ痛で有名なZ900RS国内ノーマルシートと同等の直立度合いです。

エストレヤもノーマルシートはケツ痛報告多数ですが、エストレヤハイシート、Z900RSハイシートはケツ痛回避できると評判で筆者もその通りと思います。W230とMEGURO S1のハイシートオプションがないのが悔やまれますね。150cm台くらいの人はおそらくいろいろちょうどいいと思います。

（２）足つきと足の窮屈さ

シートとステップ距離が短いと脚が窮屈になりますが、W230は垂直距離461mmです。ステップが前に出ているのでシートの一番低い位置からの実距離は493mm、体験した人の多いシート高755mmのCB400SFが垂直距離478mmと、W230はCB400SFより短いです。ただしステップが前に出ている分、実距離で比べると多少長いので、着座位置しだいでCB400SFよりはたぶんマシです。

着座位置とステップの実距離は股下の60%を切るとキツいと感じやすいようで、65%前後は理想的な水準です。そうすると、股下75cm以下くらいの人は窮屈には感じなそうで、股下82cm以上の人はまずキツいと感じそうです。相当後ろ目に座って誤魔化すことになる人が多そうですね。ちなみに、股下82cmの筆者は、できるだけ後ろに乗るとまあ大丈夫かなというくらいです。逆に足つきを気にする場合、前に座ると地面は近くなりますが、サイドカバーの張り出しが干渉するのはエストレヤと同じです。

ただ軽いのでつま先がつけば余裕でしょう。

（３）クラッチの重さ

クラッチはアシストスリッパークラッチがないので、普通の250ccクラスの重さです。アシストスリッパークラッチがある400ccクラスの方が軽く、ZX-4Rなどの方が個人的には楽です。250ccクラスは、生産終了したCB250Rなど一部にしかアシストスリッパークラッチはありませんが、こういうモデルは超絶軽いです。

アシストスリッパークラッチがついていると、より女性にも優しいバイクになったかなと思います。

（４）積載

積載力はノーマルではほぼありません。

付けられる物は純正リアキャリアくらいしか当面ありませんが、耐荷重3kgだそうで、トップケースを載せるとそれだけで終わるくらいの強度です。もうちょっと耐荷重のあるキャリアやサイドバッグサポートが出ることを期待しましょう。シート下にはETCスペースがあるのでETCを付けない人は財布くらい入ります。

（５）航続距離

燃費と航続距離ですが、燃費がリッター40.5kmタンク容量11Lです。航続距離は445.5kmになるのでまずまず使いやすいと思います。

航続距離450km水準はスズキのアドベンチャーV-Strom800が452kmです。ホンダTRANSALPは365kmしか走らないので下手なアドベンチャーより長いと思って良いです。より上の航続距離お化け組はスズキGSX250Rが492kmと、筆者くらいのたまに乗る使い方では、前回いつ給油したかまず覚えていません。

ファミリーのV-Strom250に至っては545.7km、ホンダGB350は現行車トップクラス級の591kmです。GBは一体何を目指したんでしょうか。

この辺は置いておくとして、W230はネイキッドバイクとしてはかなり長い距離走れると思って問題ありません。

（６）高速道路走行

ベースとなっているKLX230のエンジン、トランスミッションは高速道路走行が得意です。6速がやや離れていることもあり時速100km走行なども比較的エンジン回転が低めで余裕があります。軽くてパワーがないわりにはいい走りをしてくれますが、高速道路走行の詳細はまた次の機会にまとめようと思います。

３．エンジンなど

（１）スペック

エンジンの排気量は232cc、ストロークはスクエアに近く67 x 66mmです。

ピークパワー18馬力ピークトルク18N･m。同じエンジンベースのKLX230より低回転に振られています。ちなみに先代KLX230は現行より数値は上でした。KLXの排ガス規制対応前のモデルを買った人は成功かもしれませんね。

（２）音

排気音はベースのKLXのカサカサした音から、音量が上がって少し音質が変わっています。アイドリングの音は雰囲気がある音になっています。走ると低回転でアクセルを強めにひねるとそれなりに雰囲気があり、回していくとカサカサした感じになっていきます。

（３）ギア比

W230のギア比はKLX230と全体的にほぼ一緒で、二次減速比だけ違います。エンジンセッティングタイヤサイズとあわせて特性に違いがあって、W230はパワフルに走るイメージよりも低回転でゆっくり走るようにまとめられているようです。またシフトチェンジの時のエンジン回転落ちがとても遅いのが特徴で、普通のバイク感覚でクラッチをつなぐとタイミングが合いません。ヤマハSR400もかなり遅いですが、それを超えるゆっくりさです。おかげでせかせかせずのんびり乗れるのでこのコンセプトのバイクにはゆっくりさがマッチしていると思います。

４．メーターと視界

（１）メーター

メーターは2眼でW800のものが流用されているようで、エストレヤとおよそ同じです。燃料計はなくシフトポジションインジケーターもありません。せっかくヘッドライトをZ650RSから流用したのに、メーターも一緒に持ってきてくれなかったのはとても残念でした。Z900RSとZ650RSのメーターはセンターのインフォメーションディスプレイとセットになった利便性抜群のもので、ホンダCB1300SF、スズキ隼も同じような組み合わせです。このパターンは2眼メーターの完成形とも言えるもので、せっかくカワサキはこれを持っているのに、なにもW800の旧式を使わなくてもここは良かったんじゃないかと個人的に思います。

ただ燃料計がないのはW230の場合は問題ありません。警告灯がつくタイミングは残量3Lなので、つき始めから120kmくらい走れます。走り出しで残量を確認したいときは車体が軽いので、軽く揺らせば音でわかります。

そういえばカワサキはほとんどの車種で鍵で開けるヘルメットホルダーがあるのに、W230はついていませんここも「どうしたカワサキ」の残念ポイントですね。シート下にフックがあってこれを使ってくれと説明書に書いてあります。

サイドスタンドもやたら後ろにあって出しづらいですがこれは使っていれば慣れるでしょう。感触は安定感があって良い感じです。

（２）ミラー

ミラーはこのクラスにしては見やすいです250ccクラスは大抵オフセットしないと見えませんが、W230はこのまま普通に使えるでしょう。

ハンドル幅が広めなのでその分視界に余裕があるようです。

５．電子制御系

Webサイトには潔くABSとだけ書いてあるように電子制御系は何もありません。

メグロの値段感ならアシストスリッパークラッチは当然として、電スロクイックシフターくらいあってもバチがあたらないくらいでしょう。よってコスパ最悪

と思うあなたにオススメはこちらのジクサー250何ならフルカウルのSFもあります。

６．低速と取り回し

（１）車重

車重は250ccクラスとしては最軽量クラスに位置する143kgです。さすがにオフロード車には負けるものの、ホンダCRF250Lは141kgと同等なので、最軽量といって突っ込む人はいないでしょう。この軽さは何より最強です。取り回しラクラクで乗車中もよほどのことがなければ倒れることはないでしょう。生産終了したホンダCB250Rが144kgと驚異の最軽量ネイキッドでしたが、筆者は高速も走れる軽量バイクとして重宝しています。

より軽いバイクはミニバイクのホンダGROMが103kg、KLX230が133kg、シェルパ134kg、SM137kg、125ccのXSR125が137kg、150ccのジクサー150が139kg、オフロードのホンダCRF250Lが141kgと排気量下のクラスかオフロード、ジクサー250は154kgとW230より10kg重く、2気筒250ccのZ250は164kg、Rebel250が171kg、GB350は180kg前後と、ここまでくると体感が全然違います。ちなみにエストレヤファイナルは161kgでした。W230はエストレヤよりもだいぶ軽くなっています。実際、全然体感の重さが違います

（２）車体サイズ

車体サイズはコンパクトそうに見えて寸法上は意外に大きいです。CB400より大きく、Z400よりも大きいです。同じくエストレヤよりも3辺5cmくらいずつ大きくなっています。とはいえ感覚的に大きくはありません。エストレヤのこぢんまり感がなくなったくらいで、万人向きのサイズ感になったように思います。

（３）回転半径

W230の回転半径は2.6mです。2.6mは可もなく不可もなくで250cc、400ccクラスの標準です。

参考例ですが、

2.8m以上のやや小回りきかないクラスはヤマハMT-25、ホンダRebel250

2.6mのふつうクラスはCB400SF、Z650、Z400、ジクサー250

2.4mのお気楽取り回しクラスはSR400、エストレヤ

2.3mのお散歩マシンクラスはGB350、CB250R、CRF250L

2.1mの超お散歩マシンクラスはKLX230

01.9mのほぼ自転車クラスはセロー、GROM

のようになっています。お散歩マシンクラスだとより理想的でしたが、軽いので切り返しもラクラクです。

７．価格

価格はW230が643,500円、MEGURO S1が720,500円です。

同じカワサキのZ400は726,000円Z250は682,000円となっていて、W230はZ250より下という妥当なポジション、MEGURO S1はさすがにZ400は超えてこないという妥当なところに収まりました。ただ、MEGUROは性能で見てしまうとどうしても割高感はありますね。ちまたで高い高いと言われていますが、おそらくメーカーがターゲットにしていそうなホンダRebel250は61万〜65万円でW230と同レベルです。方向性が近いホンダGB350Cは66万8800円でW230より少し高くなっています。

W230の価格設定はこのへんから見て特別高くはないようです。

ちなみにホンダの無印GB350は56万1000円とバーゲンプライス継続中、125ccのヤマハXSR125は506,000円、スズキジクサー250は48万1800円となっています。

参考に過去モデルを見てみると、詳しくないと同じバイクと思うかもしれない2017年エストレヤのファイナルエディションは57万5,640円でした。7年経過して7万円弱上がっていることになります。ヤマハSR400のファイナルエディションは605,000円です。時間経過もろもろ考えて比べるとW230の方は妥当な金額設定といえそうです。

８．まとめ

まとめるとW230、MEGURO S1が向いている人は、

• 見た目が好き
• とにかく軽いバイクがほしい
• 低いシート高がいい
• 下道から高速までいろいろ使いたい
• 低回転でドコドコしたいけど250cc以下がいい
• ゆっくりシフトチェンジしたい
• 速さは求めない
• カワサキが好き
• タイが好き

の中であてはまるものが多いほど満足度が高いと思います。

MEGURO S1は特にですが、W230も性能や装備から見てコスパは決して良くありません。ただネイキッドバイクとしてこの軽さはかなり優秀で、軽さだけを求めて買っても全体のバランスがいいので後悔しないと思います。

エンジンを回して走るならホンダCB250Rなどの方が使いやすいですが、W230はベースのKLXに対して低回転をメインに使うように作られたキャラクターで、意識的に低回転を使うようにすると良さを引き出せます。

見た目を比べるとSR400やエストレヤなどよりもプラスチックの他車流用部品が多いですが、実物を見ると雰囲気が十分練り上げられていて満足感が得られると思います。250ccクラスなので車検の期日を気にする必要がなく、車体の軽さもあわせてとても気軽に維持できるのも魅力ですね。シート高は低すぎるほど低いので身長が高い人は引っかかると思いますが、175cm股下82cmの筆者は後ろ目に座れば許容範囲です。

下道から高速までそつなくこなせて1台目のバイクにも最適な選択の一つでしょう。意外に今存在していない隙間をついたバイクに仕上がっていると思います。

W230、MEGURO S1の次回は、高速道路走行性能手持ちのエストレヤファイナルとの比較同じく手持ちのCB250R、SR400などとの比較その他GB350やロイヤルエンフィールドなどとの比較などいろいろやっていきたいと思います。